著者
本仲 純子 池田 早苗 田中 信行
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1980, no.10, pp.1525-1531, 1980
被引用文献数
2

L-アスコルビン酸(ビタミンC),p-(メチルアミノ)フェノール硫酸盧(商品名メトール), ならびにヒドロキノソにヨウ素を反応させ,生じたヨウ化物イオンをヨウ化物イオン選択膜電極と飽和カロメル電極(SCE)を用いて銀電位差滴定することにより,間接的に,これら3種類の有機化合物を微量定量する方法を確立した。まず,基礎的な条件として,試料溶液の安定性,ヨウ素-メタノール溶液添加量の影響,pHめ影響,滴定時の試料溶液温度の影響,有機溶媒の影響,ならびに共存物の影響を検討しメた。また,適当な条件を用いて,定量下限を検討したところ,0.2~44mgのL-アスコルピン酸を1.6%以内の相対誤差と相対標準偏差で, 0.25-35mg のp-(メチルアミノ)フェノール硫酸塩を1.7%以内の誤差と相対標準偏差で, 0.1-23mgのヒドロキノンを0.9%以内の相対誤差と相対標準偏差で定量できることが明らかになった。<BR>最後に,市販薬剤である錠剤ならびに顆粒中のレアスコルビン酸と,4種類の市販ヒドロキノンの定量を行ない,本法と日本薬局方あるいはJISの方法による分析値の比較を行なった。
著者
薮谷 智規 金澤 隆志 福田 晃規 本仲 純子
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.36-42, 2004-02-01

食塩中の微量元素を迅速かつ多元素同時定量する方法の開発を目的として, 分離濃縮法に塩中マグネシウムを担体とする共沈を用い, 測定法にプラズマ分光法を使用する分析法について実験検討を行った.塩試料を純水約500mlに溶解し, 0.45μmのメンブランフィルターでろ過して不溶成分を除去後, 0.1mol1<SUP>-1</SUP>HNO3溶液とした.本溶液を遠心分離管に秤取後, 沈殿剤として3mol1<SUP>-1</SUP>NaOHを添加し, 沈殿生成後4時間以上放置した.さらに, 2500rpm, 10分間遠心分離を行った後にデカンテーションを含む操作を3回実施し, 沈殿の洗浄を行った.沈殿を濃硝酸で溶解し, 内標準元素を含む溶液を添加した後, 最終溶液量を2mol1<SUP>-1</SUP>HNO<SUB>3</SUB>10mlとなるように純水を加えた試料を測定溶液とした.その溶液を誘導結合プラズマ質量分析法 (ICP-MS) で測定を行った.<BR>Mg共沈時の回収率はAl, Fe, Mn, Co, Ni, Cu, Zn, Cd, REEsについていずれも90%以上であり, その相対標準偏差 (RSD) は3%以内の結果が得られた.また, 塩試料の主要な構成元素であるNa, K, Ca, Srの除去率はほぼ100%であった.本実験における空試験値は測定対象元素において検出限界以下あるいはその付近の濃度であり, 本方法における実験時のコンタミネーションの低さが確認された.実際試料として, 伯方の塩 (伯方塩業製) の分析を行ったところ, μgkg<SUP>-1</SUP>の濃度域であるAl, Fe, Mn, Co, Ni, Cu, Zn, Pbの定量が可能であった.
著者
田丸 素子 薮谷 智規 本仲 純子
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1435-1440, 2004 (Released:2005-03-28)
参考文献数
13
被引用文献数
9 13

ホタテ貝中腸腺中金属元素の多元素同時定量法の開発を行った.試料の溶液化はマイクロウェーブ密閉容器を用いる酸分解法で行い,金属元素測定には誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)及び誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)を用いた.分析値の評価にはNIST頒布の標準試料SRM 1566b Oyster tissueを用いた.試料0.5 gを採取し,硝酸,フッ化水素酸,過塩素酸の混酸によるマイクロ波酸分解を行った.分解後の試料をICP-MS及びICP-AESで測定した結果,K,Na,Zn,Mg,Ca,Fe,Al,Cu,Mn,Ba,Sr,Cd,Ni,Co,Pb,Y,希土類元素の定量が可能であった.得られた定量値はPbを除き認証値及び参考値とよく一致した.測定精度はPb,Ni,希土類元素を除きすべて相対標準偏差4% 以内であった.本法を青森産ホタテ貝中腸腺試料の分析に適用したところ,30元素の定量が可能であった.特にカドミウムは中腸腺中に69.0 mg kg-1含まれており,中腸腺中元素濃度と頁岩中元素濃度及び海水中元素濃度の比に基づき算出した生体濃縮係数は他の金属元素と比較して非常に高い結果が得られた.
著者
本仲 純子 村上 理一 金崎 英二 森賀 俊広 藪谷 智規 村井 啓一郎 中林 一朗
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本年度はルーマニア(ブカレスト市)と日本(徳島市)で大気から採取された採取された粉じん試料の分析を行った。その結果、大気粉じんに含まれる重金属の組成に明瞭な地域差が確認された。特徴は鉛の濃度がブカレストで高く、日本で低いものであった。本試料採取時には、ルーマニアは欧州で残された数少ない有鉛ガソリン消費国の一つであったため(2005年1月より全面使用禁止)高くなったものと思われる。また、日本では貴金属元素が相対的に高い結果が得られている。これは、ガソリンの無鉛化とともに、排ガス浄化用の貴金属触媒起因と考えられる。また、得られた大気環境のデータの解析に利用するためルーマニアにおける環境調査および行政の対応等の精密な調査を行った。とくに化石燃料を大量に消費し、温暖化ガスを排出する産業であるセメント産業の環境改善に関する取り組みに対して調査を実施した。これに加え、環境試料からの金属抽出に関する論文を提出した。これは、低揮発性かつ高イオン伝導性を有するイオン性液体を金属抽出用溶媒として利用するものである。さらに、窒素酸化物および大気富裕粒子状物質の削減を指向した貴金属触媒を開発した。以上の成果は、複数の国際学会(内一つはルーマニアで開催された国際会議の基調講演に選出)および国際誌への掲載がなされた。