著者
藤井 伸治
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.1378-1385, 2019 (Released:2019-10-08)
参考文献数
43

小児,思春期,若年のがんにおいて,造血器腫瘍の占める割合は多い。治療成績の向上により長期サバイバーのquality of lifeへの関心が高まっている中,治療後の妊孕性低下は重要な問題である。近年,国内外より妊孕性ガイドラインが発表されており,以前に比べて各治療レジメンの妊孕性低下リスクや妊孕性温存療法に関する情報が入手しやすくなった。一方,妊孕性温存に充てる時間が極めて限られる造血器腫瘍において,妊孕性温存療法は実施可能なのか,温存ができた場合に将来挙児が得られる可能性はどれくらいか,などの情報は不足している。さらに,妊孕性低下リスクの不明な新規薬剤を使用する場合には妊孕性温存療法を実施すべきかなど,未解決の問題が多く残されている。
著者
浅野 尚美 小郷 博昭 池田 亮 閘 結稀 髙木 尚江 山川 美和 吉岡 尚徳 小林 優人 淺田 騰 藤井 敬子 藤井 伸治
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.3-8, 2017-02-28 (Released:2017-03-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1 2

生後4カ月以内の乳児では,母由来のIgG型抗A,抗B抗体の有無を確認した上で適合血を選択しなければならない.当院では,生後4カ月以内の乳児の外科的手術症例における輸血が比較的多く,限られた検体量の中で輸血用血液製剤の正確で迅速な準備が要求される.今回,母由来のIgG型抗A,抗B抗体が陽性であった生後4カ月以内の乳児に対し,赤血球輸血の際に選択された血液型について後方視的に解析を行った.2009年4月から2013年3月の4年間に,輸血検査を行った生後4カ月以内のO型以外の乳児は309人で,間接抗グロブリン試験でW+以上の凝集を認め母由来のIgG型抗A,抗B抗体が検出された症例が44例(14.2%)であった.1+以上を示した31例のうち24例がO型赤血球輸血を選択したが,省略してもよいとされているABO血液型ウラ検査(カラム凝集法)で,児の血液型と同型のウラ血球に凝集を認めた症例が17例あった.生後4カ月以内の乳児の輸血前検査として,A1またはB血球との間接抗グロブリン試験で1+以上の凝集を認めた場合に加え,血液型検査のウラ検査も,母由来のIgG型抗A,抗B抗体を検出できる場合があり,O型赤血球輸血の選択基準のひとつになり得ると考えられた.