著者
有川 裕之 藤井 孝一 蟹江 隆人 上新 和彦 井上 勝一郎 鬼塚 雅 自見 忠
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
Dental Materials Journal (ISSN:02874547)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.67-72, 1982-12-25
被引用文献数
7

印象材の操作時間,硬化時間を決定するために種々の方法が試みられてきた。そのひとつとしてウィルソン(1964)は硬化時における印象材の粘弾性変化を測定することによって操作時間,硬化時間を決定するための装置レシプロケーティングレオメータを開発した。しかし印象材の操作時間,硬化時間は粘弾性の変化よりもむしろ硬化時の弾性変化から決定するほうが臨床的にみて好ましいと思われる。そこで本研究ではそのための装置としてパルセーティングレオメータを開発した。この装置は試料にくり返し一定ひずみを加え,その弾性回復量を測定することによって操作時間,硬化時間を決定するものである。種々の印象材について測定を行った結果,本装置は操作時間,硬化時間の決定ならびに効果時における印象材のレオロジー的性質をも知ることができるので印象材の比較検討を行う上で有効であることがわかった。
著者
藤井 孝一
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
Dental Materials Journal (ISSN:02874547)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.243-259, 288, 1989-12-25
被引用文献数
6 28

義歯床用材料(PMMA)に関して,曲げ疲労試験及び引張疲労試験を行った。さらに引張疲労試験に伴う粘弾性と引張特性の変化を調べた。 その結果,疲労試験後の破面の比較では,曲げ疲労による破面は,引張側の表面からクラックが開始し,その後のクラックの進行を表わすstriationが観察され,破壊にいたるという様相を示す。一方,引張疲労の場合にも類似の傾向が認められる。 疲労に伴う粘弾性の変化については,疲労が進むと貯蔵弾性率(E')は,測定されたすべての温度領域で低下する。一方,損失弾性率(E''),損失正接(tanδ)はわずかづつ増加する傾向を示した。また,弾性率,引張強さ,靭性などは,10^4回の繰り返し数で,すでに低下を示していた。これらの結果は,疲労に伴うクラックの発生が材料の劣化を招いたものと考えられる。 義歯床用材料として使用されている4種類の市販品の疲労特性を調べた。流し込み型レジンの疲れ強さは加熱重合型より小さく,材料間で大きくことなる。このばらつきの一因として,材料組成の違い,未反応物質の量の違いなどが考えられる。