著者
藤伊 正
出版者
筑波大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1987

暗黒下で赤色吸収型(Pr)としても生合成されたフィトクロムは, 赤色光照射後, 近赤外光吸収型(Pfr)に交換し, 様々な光形態形成現象を引き起こすとともに生体内ですみやかに分解される. 従来, 活性型であると考えられてきたPfrが急速に分解されることは, Pfrの分解が光情報の伝達において重要な意味を持つ可能性を示す. 我々はフィトクロムによる光情報の伝達機構を研究する一環として, Pfrを特異的に分解するプロテァーゼの性質を各種阻害剤を用いて検討した.黄化アラスカエンドウの七日目の芽ばえから上部2mmを切り出し, 各種阻害剤を与え, (時間の暗処理後, 3時間の赤色光照射を行った. それ等α材料を用いSDS-PAGE及びイムノプロッティングを用い, 抗フィトクロム抗体でフィトクロム検出, 解析を行った. 結果は以下の通りである.(1)invivoでのPfrの分解は, 分光学的及び免疫化学的にほぼ同じ動向を示し, 半減期は約90分であった.(2)DFP, TLCK, Leupeptin等αセリンプロチアーゼの阻害剤によってPfr分解が抑えられることから, 目的とするプロテアーゼはトリプシンtypeαセリンプロテアーゼであると考えられる.(3)Ophenanthrolin, α2'-dripyridyl, EDTA等のキレーターは, Dfr分解を抑え, 又, 金属による分解活性の回復実験から, Fe^<2+(3+)>, Zn^<2+>を必要とすることがわかった.(4)アサイド, アンチマイシンA, CUP, オリゴマイシン等のATP産生系の阻害剤は, Pfr分解を強くすることから, ATDが必要であると考えられる. 以上の結果から, Pfrを特異的に分解するプロテアーゼは, トリプシン typeセリンプロテアーゼであり, 分解にはFe, Znを要求し, ATP依存性であることが示唆された.