著者
藤原 七重
出版者
パーソナルファイナンス学会
雑誌
パーソナルファイナンス学会年報 (ISSN:18843328)
巻号頁・発行日
no.9, pp.79-89, 2009-10-15

サブプライムショック以降、急速に収縮しつつある個人向け貸付の分野では、代替的な資金調達手段が模索されており、本稿で取り上げるP2P Lendingはその有力な選択肢のひとつとして期待されている。借り手は銀行やクレジットカード会社から借入をするよりも、低い金利で資金を調達することができ、貸し手には、これまで金融機関が独占していた消費者への貸し付けに資金を投入する機会が開かれた、いわば「金融業の民主化」として歓迎されている。この金融機関から個人同士の金銭貸借へのシフトは、ハーバードビジネスレビューでも革新的なビジネスアイデアとして取り上げられているほどだ。しかし、これは単なる一時的なブームに過ぎないのか、もしくは伝統的な金融機関の代替的な選択肢となりうるのかは現時点では判断できない。それゆえ、本稿は、P2P Lendingという、インターネットを介した個人間の金銭貸借という新しい金融サービスについて検討した。特に、見過ごされがちな借り手のリスクを抑制するための仕組み作りに注目した。Stiglitz and Weiss(1981)が指摘したように、貸し手と借り手の間には情報の非対称性が存在する。それゆえに、その他の消費者信用サービスと同様に、P2P Lendingにおいても信用情報を基盤としたスキームづくりをすることによって、貸し手と借り手の間の情報の非対称性を解消することが肝要となる。P2P Lendingが既存の消費者信用サービスと異なるのは、コミュニティというソーシャル・キャピタルを活用することで、更に情報の非対称性を解消しようと働きかけている点だ。しかし、P2P Lending自体が金融サービスとしては未成熟な側面もあり、それゆえに様々な問題を孕んでいることは否めない。とくに、信用情報を巡る制度や認知度は国や地域によって異なっており、信用情報機関が十分に発達していない地域やクレジットスコアになじみのない地域においては、貸し手が合理的な判断ができるのかという課題が残る。