著者
藤原 成一
出版者
日本大学
雑誌
日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
巻号頁・発行日
no.43, pp.117-131, 2006

時代の転換期には新しい型の人間が登場し、新しい型の人間が時代を創造してゆく。平安時代末期には野性味ある「武者」(むさ)が世をきり拓いたし、十四世紀には農業経済の先進地帯を中心に、上はバサラ大名から下は野伏山伏や強盗まで、「悪党」が社会の各階層に輩出して世の中を混乱に陥れ、時代を大きく動かした。時代が悪党をくすぶり出し、悪党が時代を活気づけた。彼らは御恩と奉公という絶対服従倫理の枠内に居ながら、それを嘲笑し蹂躙(じゅうりん)して新奇な価値観や異装の美学を創り出した。頼りとするもののない時代における自侍のライフスタイル、男の生きざまであった。時代を直視し、時代に向かって、自らの力をぶちまけて生きる男である。本稿では、時代と格闘して生きる悪党の生態を見つめ、世直しを期待されるまでに人気をかちえた彼らの歴史上の意味を検証する。悪党といわれるこんなやくざな連中が、私たちの歴史を鮮やかに彩ってくれるのである。
著者
藤原 成一
出版者
日本大学
雑誌
日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.67-81, 2004-07-30

日本の住空間は「締」「縁」「間」「奥」「離」の五つの基本原理によって形成されてきた。これら五つのキーワードは空間構成の原理であるばかりでなく、文芸や芸術・芸能にあっても重要な思考枠であり、かつ作法・方法でありつづけてきた。日本人の発想、表現方法はこの五つの原理で明快に解明しうる、という仮説の提起である。本稿はそのうち「奥」という概念をとりあげ、奥とか奥行きという感性や思考がいかに深く日本人にしみ込んでいるかを、主として住空間の面から実証しようとするものである。イエにおけるクチからオクヘの構造、社寺にみる下-中-上という奥行き構成、村落や都市におけるオモテからオクヘの空間原理など、一貫するのは奥志向であった。その感性と思考はものの見方、生活のしかたから文化全般にまで通底しており、奥の思想は日本文化の基礎であった。奥を大事とする考えや感性に日本美学の本質と独創があった。
著者
藤原 成一
出版者
日本大学
雑誌
日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.A77-A92, 2005

私たちの生存の場は「締(しめ)」「縁(えん)」「間(ま)」「奥」「離」という五つの基本原理によって形成されてきた。これら五つのキーワードは空間構成の原理であるだけでなく、文芸や芸術・芸能にあっても重要な思想であり、かつ作法・方法でありつづけてきた。日本人の発想、表現方法の根底にあるのはこの五つの原理である、という仮説の提起である。本稿はそのうち「間」をとりあげる。空間・時間・世間・人間というように、「間」は私たちの生きる場を根拠づけるものであるだけでなく、日本文化では、とくに芸術・芸能の面で、また人と人との間など、生き方においても、決定的な意味をもちつづけてきた。芸術から建築まで、人や世間、神仏とのつき合いから死生観まで、一貫する「間」の思想と演出方法を見つめ直し、日本文化の本質を再確認することによって、「間」の新しい創出を挑発する。
著者
藤原 成一
出版者
日本大学
雑誌
日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.A19-A35, 1999-03-15