著者
藤原 秀夫
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
no.92, pp.1-39, 2011

歴史的には信用創造・貨幣創造モデルは部分的なモデルとして確かに存在していたし、テキストにもしばしば現れるが、従来の信用創造および貨幣創造の説明の本質的な弱点は、この部分的モデルがマクロの同時決定モデル(一般均衡モデル)にどのように結合されるのかという点を、不均衡調整過程も含めて全面的に明らかにしていないということであった。部分的な信用創造・貨幣創造モデルをマクロ信用創造一般均衡モデルへと展開していく上で、歴史的にみて、重要な方法の1つは、フィッシャー=フリードマンの貨幣乗数の定式化であった。多くのモデルがこれを踏襲している。もう1つは、預金供給に関して、民間銀行部門の預金需要への受動的行動態度を仮定する方法である。いずれも、貨幣供給の構成要素である預金供給がマクロ経済でどのように決定されるのかが、核心的な論点である。本稿では、部分的な信用創造・貨幣創造モデルを一般均衡モデルへと展開していく上で、基本的には、上記の2つの方法を検討している。これらの方法によって、部分的な信用創造・貨幣創造モデルを一般均衡モデルへと整合的に展開することは十分に可能であったが、部分的な信用創造モデルが持つ本源的預金と派生預金の区別を重視した展開は、民間銀行部門の預金供給に関する受動的な行動態度を仮定するモデルであった。多くの論者が、一方では部分的な信用創造モデルでは本源的預金と派生預金を区別しながら、他方、一般均衡モデルでは、フィッシャー=フリードマンの定式化に従って、派生預金供給のみとして、その代替的な方法を試みないことは、整合的な議論であるとはいえない。
著者
植田 宏文 藤原 秀夫 丸茂 俊彦 五百旗頭 真吾 林田 秀樹
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、資産の証券化を通じた市場型間接金融の拡大等に代表される金融システムの変革が、どのような経路を通じて経済の成長に資するのか、さらにその問題点は何かについて理論・実証的に明らかにすることを目的として分析を継続してきた。これらの分析は、現在における経済諸問題の背景を明確化させ、混迷を深める今日において将来のあるべき方向性を示す上でたいへん意義があるものと言える。