著者
藤山 敦 金折 裕司
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.202-215, 2009 (Released:2013-03-31)
参考文献数
36
被引用文献数
1 1

本論文では詳細な地形・地質学的調査に基づいて, 山口県南東部に位置する伊陸盆地に源流を発する由宇川と四割川に沿う小規模な河成段丘を高位から伊陸I面~VI面の6面に区分した. 由宇川上~中流部の約5km区間に発達する伊陸II面とIII面は分布や段丘面の傾き, 段丘堆積物や基盤の地質の違いなどから, 伊陸II面の形成以前には河川流向が現在と逆であったことを明らかにした. 空中写真判読と現地踏査によって, 伊陸盆地内に変位地形を確認するとともに, 段丘堆積物を切断する断層露頭を発見し, NE-SW走向の活断層(日積断層 : 新称)の存在を明らかにした. 河川流向の変化は, 由宇川の下刻に伴う河床低下により発生した河川争奪によるものであり, 上流域での堰き止めや氷河期の海面変化に加えて, その主因は地盤隆起や活断層運動を生起させた広域テクトニクスに求めることができる.