著者
伊崎 晃
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.19-29, 1960-07-31 (Released:2010-06-04)
参考文献数
4

Japanese National Railways, famous for its Kammon undersea tunnel, is now carrying out his next marine geological survey in three localities, i. e. Tsugaru, Akashi and Naruto Straits. We can have much more useful methods than in Kammon days, and so the secret of deeper, wider, and rapidswifting sea bottom is revealed step by step by tight combination of all possible survey works.
著者
神崎 裕 藤井 幸泰
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.213-218, 2018-10-10 (Released:2019-01-10)
参考文献数
5

地質踏査の三種の神器の一つである野帳について,紙からデジタルガジェットであるタブレットPCを利用し,デジタル記録を行った事例を,使用したハードウェア,ソフトウェアを含めて利点,欠点,特徴を含めて具体的に紹介する.
著者
塩﨑 功
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.120-124, 2019-08-10 (Released:2019-12-24)
参考文献数
18
被引用文献数
1 3
著者
長谷川 修一
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.336-344, 2010 (Released:2013-03-31)
参考文献数
20
被引用文献数
1

高松クレーターは, 重力探査によって発見された伏在陥没構造で, 高松平野南部の仏生山町を中心に直径約4km, 深さ千数百mの規模と推定されている. 高松クレーターをめぐっては, 1994年から約10年間, その成因と渇水時の地下水源としての利用について論争が続いた. 高松クレーター論争は, 学会における議論により, 「夢」と「ロマン」と「渇水の切り札となる水源」として, マスメディアの報道が先行した特異な事例である. また, 高松クレーターの報道によって, 行政が水源調査を行い, 民間会社が温泉事業に投資し, 市民が地域おこしの題材とするなど, 単なる科学論争を超えた社会現象になった. 本稿では, 高松クレーターに関する論争と新聞報道を検証し, 応用地質学の市民生活に貢献のあり方を考察した. 高松クレーターでは, 日本初の隕石衝突孔なら, 地底湖があればと市民に期待をいだかせる報道に対して応用地質学の論理展開を軸に表層地質, 物理探査およびボーリング試料の分析・試験データに基づき繰り返し反論・説明することによって, 一方的な科学情報による地元の混乱と科学者や技術者の信用失墜を未然に防止することができた.
著者
麻植 久史 小池 克明 吉永 徹 高倉 伸一
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.180-191, 2007-10-10 (Released:2010-03-26)
参考文献数
37
被引用文献数
2 4

過去の活動記録が少ない活断層で大規模地震が発生していることから, 地震の発生メカニズムを理解するうえで, 活断層の深部構造の解明がますます重要になってきている. 本研究では, 地域により微小地震の発生頻度や傾向が異なる布田川-日奈久断層帯に注目した. その地域性の要因を明らかにするために, 深部探査に有効なMT法を用い, 比抵抗分布に基づく深部構造と微小地震分布との関係について検討した.まず, 日奈久断層の北部と中部におけるリニアメントの下部で比抵抗の不連続境界がほぼ垂直方向に見出せた. これは, 広範囲に低比抵抗帯を伴わないので, この地域のダメージゾーンは小さい. 一方, 日奈久断層の南部では断層沿いに低比抵抗帯が現れた. ここは日奈久断層と臼杵-八代構造線が交差する位置に当たるので, 大きなダメージゾーンが形成されたと考えられる. また, 1995~2005年の震源分布に基づくと, 布田川-日奈久断層帯は北からI~IVの四つの区域に分割できる. 各区域において, MT法深部比抵抗分布と震源分布とを重ね合わせ, 地震発生メカニズムについて考察した. これより, 布田川-日奈久断層帯は地形的には連続した同一断層系のように見えるにもかかわらず, 破砕構造, 力学的物性, 応力環境は大きく異なることが明らかになった.
著者
池田 俊雄
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.4-10, 1998-04-10 (Released:2010-02-23)
参考文献数
28
著者
金折 裕司 小林 健治 安野 泰伸 割ヶ谷 隆志 山本 哲朗
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.220-230, 1999-10-10 (Released:2010-02-23)
参考文献数
27
被引用文献数
1 3

1997年6月25日に発生した山口県北部地震 (M6.1) の震央付近の阿武川河床で確認された断層露頭の性状を記載するとともに, 地震動による家屋被害のデータを再検討し, 震源断層と断層露頭や被害域との関係を議論した. 断層露頭は地質境界として指摘されていた迫田-生雲断層の北東端付近に位置し, NE-SW方向で幅5m以上のカタクレーサイト化したゾーンが発達している. このゾーン内部には最大幅50cmの断層ガウジ帯が “杉” 型に雁行配列して発達し, 右横ずれの運動センスを示唆する. この運動センスは山口県北部地震の発震機構と一致した. さらに, この地震の余震は迫田-生雲断層北東部に集中する.家屋被害率を被害家屋総数/世帯数と定義し, 山口県阿武郡阿東町とむつみ村の地区 (字) ごとに被害率を計算した. 被害率の最も高かった生雲西分地区は震央の南西約5kmに位置し, 迫田-生雲断層上にあった. また, 被害域は生雲西分を中心とし, 迫田-生雲断層を軸とする半径10kmの円内に収まっている. これらのことから, 山口県北部地震は迫田-生雲断層北東部の活動で発生したことが裏付けられた.
著者
草野 由貴子 鈴木 浩一 徳永 朋祥
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.2-14, 2016-04-10 (Released:2016-06-04)
参考文献数
30

大陸棚上の島嶼である隠岐島前・中ノ島における地下の塩水・淡水分布の解明を目的とし,CSAMT法電磁探査により比抵抗2次元断面を得るとともに,現地で採取した岩石試料の比抵抗を計測した.中ノ島では陥没構造を形成した推定断層の存在が既往研究により示唆されており,比抵抗2次元断面にみられた構造は,断層による地質構造の相違を示していると解釈された.陥没構造内部では,地表~標高約-100m前後で高比抵抗,標高-100~-200m前後で低比抵抗,その下部で高比抵抗,さらに深部で低比抵抗を示した.現地の岩石試料の比抵抗計測結果に地下水の化学組成を併せて考察すると,地表~標高約-100m前後の高比抵抗領域は現在の気候下で涵養された淡水地下水の存在領域,標高-100~-200m前後の低比抵抗領域は塩濃度の高い地下水の存在領域,その下位の高比抵抗領域は現在よりも寒冷な気候下で涵養された塩濃度の低い地下水の存在領域,さらに深部の低比抵抗領域は塩濃度の高い地下水の存在領域であると考えられた.また,陥没構造外部では,地表~標高-50m前後に高比抵抗領域,その下位に低比抵抗領域がみられ,その境界は表層の火山岩とその基盤の堆積岩との岩相の相違であると解釈された.
著者
遠藤 則夫 木宮 一邦
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.101-114, 1987-09-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
18
被引用文献数
5 9 5

Weathering crust of granitic rocks in the middle part of Abukuma Mountains are divided into five classes, fresh granites, weathered granites, “masa” A, “masa” B and reddish “masa”, according to the weathering degree. Fresh and weathered granites are distributed limitedly and narrowly along large rivers, and “masa” A, “masa” B and reddish “masa” cover extensively all over the area. The thick weathering crusts are distributed restrictedly on the low relief surfaces. The boundary surfaces between weathered granites and “masa” is parallel to the plane connecting the swells of low relief surfaces, and is nearly horizontal. These facts suggest that the weathering crusts of the middle part of Abukuma Mountains are fossil weathering crusts in which were formed from middle Miocene to early Pleistocene.Clay minerals produced from biotite during the weathering process, were identified by X-ray diffraction examination. The experiment revealed that fresh biotite was first altered into intergradient chlorite-vermicurite, and then changed into interstratified biotite or kaolinite.Gibbsite exists only along the land surface. This fact suggests that gibbsite has been produced under the present conditions after the current surface was formed.
著者
釜井 俊孝
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.282-291, 2013-02-10 (Released:2014-02-28)
参考文献数
7
被引用文献数
2 4

2011年東北地方太平洋沖地震によって,仙台市緑ヶ丘4丁目では造成地盤地すべりが発生した.ここでは,約1年間にわたる地すべり変動(地表傾斜,地中傾斜),地表地震動,間隙水圧の精密動的観測結果を報告する.この斜面では,本震から10~11か月後まで,地山を巻き込む重力性の斜面変動が継続した.しかし,地中傾斜は盛土下底のすべり層で最大であり,盛土全体の地すべりが,今回の斜面変動の主体である.地中傾斜の地震応答は,すべり層や亜炭層など地盤内の弱層で最大となり,それよりも上部の盛土では増幅率が小さくなる傾向が認められた.この弱層による免震効果は,弱層の層厚や地震の震央距離によって異なり,地すべりの構造が,地震応答に強く影響を及ぼしている.過剰間隙水圧は最大水平地動速度にほぼ比例して増加した.この関係から,80 cm/sを越える強震動によって,過剰間隙水圧の増加によるすべり層強度の喪失が発生し,地すべりに至ったと推定される.また,すべり層における局所破壊が成長し,より規模の大きい地すべり変動に発展する過程が観測された.今回のような精密動的観測は,強震時における地すべりの挙動を知るうえで,基礎的な知見を提供するものとして重要である.
著者
松山 一夫 武田 康人 下田 昌宏 高村 光一 小野 高志
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.273-279, 2011 (Released:2013-03-31)
参考文献数
6
被引用文献数
2 1

八丈島における地熱調査は, 東京電力(株)により1984年度から開始され, 1989年度からは(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による地熱開発促進調査が行われ, 東山南部地域に300℃以上の高温地熱資源が存在することが確認された. この地熱開発促進調査の結果を受けて, 東京電力(株)では地熱発電所立地地点調査を行い, 1995年度に3本の調査井を掘削して蒸気生産に成功し, 発電所建設を経て, 1999年3月25日に営業運転を開始した. 現在, 生産井1本により平均出力2,000kWの発電を安定して継続しており, 八丈島のベース電源として利用され, 地熱発電所の運転により従来の内燃力発電と比較して, 二酸化炭素の排出量が約4割削減されている. 一方, 八丈町は, 地熱発電所の建設と並行して1992年度から温泉開発を進め, 4つの町営有料温泉利用施設を建設し, その利用者は年間約17万人である. また, 冬季間, 地熱発電所の余熱を利用して発電所周辺の温室ハウスへ熱供給を行っている. 本報告は, 八丈島における地熱開発の経過, 地熱資源の分布状況および地熱利用の現況について述べる.
著者
北岡 貴文 楠見 晴重 寺田 道直 中村 真 増田 德兵衞
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.16-24, 2013-04-10 (Released:2014-04-07)
参考文献数
17

京都市伏見区は京都市の最南部に位置し,日本酒の有名な産地である.対象地は 4 km2ほどの地域に酒造会社が所有する約50本の井戸が密集し,地下水の利用が盛んな地域である.本研究は,京都市伏見区域における浅井戸観測井の水位を対象として,周辺の揚水を伴った地下水位挙動を明らかにするために,現場計測ならびに数値解析による検討を行ったものである.本研究の成果として,浅井戸観測井の水位変化を求めるための3次元地層モデルを作成し,酒造会社が密集する場においての地下水位を推定し,実測値と比較的に整合していることが認められた.
著者
千木良 雅弘
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.200-209, 2015-12-10 (Released:2016-01-23)
参考文献数
31
被引用文献数
8 6

深層崩壊は,急激な動きと長距離移動を伴い,甚大な災害を引き起こすため,その災害軽減には,場所を予測することが第一に必要である.本論では,深層崩壊の実績に基づいて,発生場所の地質・地形的特徴,および発生危険度についてとりまとめ,最後に今後の研究について展望した.降雨による深層崩壊は,大抵の場合それに先行して重力斜面変形が生じていることから,重力斜面変形のタイプを分類し,これに斜面上部の小崖の有無,斜面下部の崩壊の有無などの地形的特徴を加味して発生危険度を4段階に区分した.地震による深層崩壊には,発生前の斜面不安定化過程がいくつか認められる.1つ目は化学的風化,2つ目は重力斜面変形,3つ目は事前に地すべりが対岸に衝突し,その後下部を侵食などによって切断され,不安定化している場合,4つ目は地震時に水が地下から噴出して発生する地すべりである.深層崩壊に関連して,今後次のような研究の展開が期待される.重力斜面変形の地震時不安定化,ハロイサイトに富む土の動的性質,さらに,粘土や岩石のせん断強度の速度依存性,降雨の高解像度計測とリンクした斜面内部の水の挙動と斜面の不安定化の解明である.
著者
藤井 幸泰 高橋 学 佐藤 稔
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.193-200, 2016-12-10 (Released:2017-01-07)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

屋久島に存在する花崗岩亀甲石は,円礫表面に亀甲状割れ目が認められる特徴を有する.亀甲石の断面を観察するとコア部とクラスト部の二層構造を確認でき,亀甲状割れ目は表面からこの境界まで発達している.花崗岩亀甲石を対象に,水銀ポロシメータを用いた空隙測定を実施したところ,以下の事実が判明した.①クラスト部よりもコア部の空隙率が高い②クラスト部とコア部とでは空隙サイズ頻度分布のピーク位置が異なるまた,亀甲石ではない未風化花崗岩や風化花崗岩と比較したところ,風化による変化は空隙サイズ全体が増加するのに対し,亀甲石内部の空隙構造は空隙サイズのピーク位置や量が変化することがわかった.さらに薄片観察なども考慮したところ,亀甲石内部の変化は変質によるものだと推測される.
著者
塩﨑 功
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.120-124, 2019
被引用文献数
3
著者
藤山 敦 金折 裕司
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.202-215, 2009 (Released:2013-03-31)
参考文献数
36
被引用文献数
1 1

本論文では詳細な地形・地質学的調査に基づいて, 山口県南東部に位置する伊陸盆地に源流を発する由宇川と四割川に沿う小規模な河成段丘を高位から伊陸I面~VI面の6面に区分した. 由宇川上~中流部の約5km区間に発達する伊陸II面とIII面は分布や段丘面の傾き, 段丘堆積物や基盤の地質の違いなどから, 伊陸II面の形成以前には河川流向が現在と逆であったことを明らかにした. 空中写真判読と現地踏査によって, 伊陸盆地内に変位地形を確認するとともに, 段丘堆積物を切断する断層露頭を発見し, NE-SW走向の活断層(日積断層 : 新称)の存在を明らかにした. 河川流向の変化は, 由宇川の下刻に伴う河床低下により発生した河川争奪によるものであり, 上流域での堰き止めや氷河期の海面変化に加えて, その主因は地盤隆起や活断層運動を生起させた広域テクトニクスに求めることができる.
著者
木下 博久 長谷川 修一 野々村 敦子 山中 稔
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.472-484, 2019-02-10 (Released:2019-12-24)
参考文献数
50
被引用文献数
1 3

流域スケールにおける斜面崩壊の潜在的危険度を評価することを目的として,谷密度のみを変数とする簡便な評価手法を提案し,その有効性,適用性を検討した.国土地理院発行2万5千分の1地形図及び10mDEMを用いた地形解析から谷線を抽出し,谷密度を算出した.谷線はコンターの平均曲率(H)から求め,H>0.1を閾値とすることで,谷地形としての再現性が高くなることを確認した.表層崩壊,土石流を主とする既往土砂災害を対象として,災害発生斜面の流域の谷密度と比較した結果,谷密度が高い流域ほど豪雨時に不安定となり崩壊が発生しやすい場所が多く存在すること,また,谷頭付近を発生源とする崩壊が多いなどの傾向が認められた.谷密度と崩壊頻度との関係は,0.5~1.5km2程度の流域において比較的良い相関(r=0.60~0.66)を示した.このことから,対象とする解析領域の大きさを考慮することで,本手法は表層崩壊や土石流といった斜面崩壊の危険度評価に有効な手法となり得ると考えられる.今後さらに既往災害事例との比較を重ね,また,地形地質的素因が谷密度に与える影響を考慮するなどで,様々な崩壊タイプに対する本手法の汎用性,適用性の拡大が期待される.
著者
川﨑 了 小潟 暁 広吉 直樹 恒川 昌美 金子 勝比古 寺島 麗
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.10-18, 2010 (Released:2013-03-31)
参考文献数
12
被引用文献数
14 15

筆者らは, 土や岩の代表的なセメント物質である炭酸カルシウムまたはシリカを主成分とし, 微生物の代謝活動により土や岩の間隙や岩の割れ目を自然に閉塞させる新たな概念に基づくグラウト, すなわち, バイオグラウトを開発するための基礎的な研究を実施中である. 本論文では, 炭酸カルシウムを用いたバイオグラウト, すなわち, 炭酸カルシウム法に関して検討を実施した結果について報告する. 具体的には, 日本各地より採取した自然の土壌中に生息する微生物を用いて試験管による炭酸カルシウムの析出試験を行い, 試験時における温度の違いが炭酸カルシウム析出に与える影響について調査した. その結果, 温度5~35℃の低~中温域において, 土壌微生物により炭酸カルシウムが試験管内に析出することが示唆された. 一方, 試験に用いた土壌微生物の菌数測定および遺伝子解析を実施し, 試験前後の土壌中に含まれる微生物相の変化に関して, 生菌数, 最も出現頻度の高い菌の菌数およびその帰属分類群を用いることにより比較を行った. その結果, それらは主にPenicillium属およびAspergillus属の菌類であり, 有機栄養源を活発に代謝することにより菌数が増加したものと推定された.