著者
藤岡 麻理子 中西 正彦 鈴木 伸治
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.552-559, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
11

近年、都市計画分野の国際協力の新たな傾向として、都市のソフト面にも重きをおいた自治体レベルでの都市づくりの技術移転が行われるようになってきており、さらにその件数と重要性は今後増していく可能性がある。固有の社会的、文化的背景や自然環境等への配慮が求められる都市づくりの技術移転は、従来型の都市開発協力事業とは手法や配慮事項等において多くの点で異なると考えられる。本研究では、そうした技術移転の実践上の課題を明らかにすることを目的として、1980年代から都市デザインのノウハウを活かし、マレーシアにおいて都市づくりの都市間協力を行っている横浜市の事業の概要・成果・課題の整理・分析を行った。その結果、横浜側が計画を提案し、地元自治体が実施を担った事業においては、事業に長期的に関わることのできる地元自治体の人材や地元住民の組織化が実現に至る鍵となっていたことが明らかとなった。一方、2つの市が都市づくりに協働して取り組む技術移転事業においては、社会文化的な相違や都市づくりへの意識差が一つの課題としてあり、さらにそうした差異を補いうる事業システム構築も重要課題として見出された。