著者
藤崎 順子 山口 和久 山本 智理子 堀内 裕介 大隅 寛木 吉水 祥一 片岡 星太 平澤 俊明 由雄 敏之 石山 晃世志 山本 頼正 土田 知宏 五十嵐 正広
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.778-787, 2016-05-25

要旨●2013年4月〜2014年3月までの間に,当院でESDを施行した症例中,除菌後発見胃癌症例166例の検討を行った.臨床的には陥凹型,分化型が多く,除菌後5年未満,5年以上に分けると,5年以上で発見された病変サイズは小さい傾向にあった.さらに,レトロスぺクティブに画像の解析が可能であった分化型優位の140例について検討を行った.術前にNBI拡大内視鏡検査にて範囲診断を施行し,ESDを行った結果,病理学的に水平断端陽性,もしくはマーキング上に病変範囲が乗っていた範囲誤診例だった症例は,5年未満で79例中1例(1.3%),5年以上で61例中3例(4.9%)と5年以上の症例で多かった.画像の検討が可能であった140例は,除菌後5年未満が79例,5以上〜10年未満が38例,10年以上が23例であった.NBI拡大内視鏡検査での胃炎様所見は,5年未満で34例(43.0%)にみられ,5年以上で25例(41.0%)であった.さらに,5年以上を5〜10年と10年以上に分けた場合,5〜10年で13例(34.2%),10年以上経過例では12例(52.2%)であり,10年以上で高い傾向を示した.病理組織学的に表層の非癌上皮が確認できた症例は,5年未満で27例(34.2%),5〜10年で8例(21.1%),10年以上で8例(34.8%)であった.今回の検討では除菌後長期例での胃炎様変化の出現率が高かった.
著者
山本 頼正 藤崎 順子 大前 雅実 平澤 俊明 五十嵐 正広
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.1492-1503, 2016 (Released:2016-09-20)
参考文献数
66

ヘリコバクター・ピロリ菌は慢性的な胃炎を惹起し,それに引き続き胃癌を引き起こす要因のひとつである.本邦では衛生環境の改善や,除菌治療の普及により,その感染率は徐々に低下している.しかし最近,ピロリ菌未感染の胃癌が報告されており,その頻度は全胃癌の0.42-5.4%であり,おおよそ1%である.ピロリ菌陰性胃癌の診断基準は,報告によって様々であり,いまだ確立されていない.われわれは,ピロリ菌陰性胃癌の必要最小限の診断基準として,内視鏡所見,病理所見,血清ペプシノーゲン法の2つ以上で陰性で,尿素呼気テストまたは血清IgG抗体が陰性,かつ除菌歴がない事を提案する.ピロリ菌感染以外の胃癌の原因としては,生活習慣,ウイルス感染,自己免疫性疾患,遺伝的疾患などいくつかの要因が関連することが知られているが,ピロリ菌陰性胃癌の主な原因はいまだ不明である.ピロリ菌陰性胃癌は,未分化型癌の頻度が高く,主に印鑑細胞癌であり,比較的若年者の胃中―下部の褪色調病変で,平坦・陥凹型の肉眼型が多い.一方で分化型癌は,未分化型癌に比して相対的に高齢者の胃中-上部に認める胃底腺型胃癌であり,粘膜下腫瘍様や陥凹型の肉眼型である.ピロリ菌陰性胃癌を早期診断することで,内視鏡切除などの低侵襲治療が可能となるため,内視鏡医はピロリ菌陰性胃癌の臨床所見,内視鏡所見について十分理解しておくことが重要である.
著者
平澤 俊明 多田 智裕 藤崎 順子
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.119, no.7, pp.600-609, 2022-07-10 (Released:2022-07-11)
参考文献数
52

上部消化管領域においても,人工知能(artificial intelligence;AI)の臨床応用は内視鏡診断を中心に増加傾向にある.食道,胃,十二指腸の各臓器で,AIによる病変の指摘,質的診断(良悪性の鑑別),量的診断(範囲・深達度診断)などが報告され,いずれも高い精度である.当初は静止画での検討であったが,動画での検証へ進み,さらにAIと医師との比較,AIの使用の有無による医師間の成績の比較が行われ,中国では大規模なランダム化比較試験も行われている.現在は,研究から臨床導入のフェーズに入ってきており,今後どのようにAIが臨床現場で使われ,医療が変化していくかが注目されている.医師がAIの利点と欠点を理解して使用すれば,AIは医師のよいサポートツールとなるであろう.
著者
由雄 敏之 堀江 義政 青山 和玄 吉水 祥一 堀内 裕介 石山 晃世志 平澤 俊明 土田 知宏 藤崎 順子 多田 智裕
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.385-391, 2019-03-25

要旨●食道癌は進行癌として診断されると予後が悪く,早期診断が重要である.近年,人工知能(AI)はディープラーニングを用いることにより医療の分野で非常に進歩した.筆者らは食道癌拾い上げ診断におけるAIの診断能を検証した.8,428枚の食道癌の内視鏡画像を用いてAIを教育し,別に準備した1,118枚の画像で検証した.AIは食道癌症例の98%を驚くほどの速さで検出することができ,10mm未満の7病変もすべて検出した.また98%の画像で表在癌と進行癌を判断することができた.偽陽性が多い,拡大観察については十分に検討されていないなどまだ課題はあるが,AI画像診断支援システムの臨床応用の可能性が示唆された.