著者
太刀川 貴子 渡理 英二 染谷 健二 池田 年純 荒明 美奈子 藤巻 わかえ 金井 孝夫 内山 竹彦 宮永 嘉隆
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.255-263, 1999-11-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
21
被引用文献数
2

弱酸性電解水の各種病原微生物に対する効果を検討した.弱酸性電解水は電解添加液 (NaCl, HCl) を微量添加した水道水を隔壁膜のない電気槽で電気分解し, pH5.0-6.0に設定することにより, 次亜塩素酸を効率よく有効利用する目的で開発された.細菌に対する効果は含有塩素濃度, pH, 温度, 作用時間の影響を検討した.無芽胞菌 (13種を検討) においては本電解水含有塩素濃度30ppm, 作用時間30秒で被験菌株のほとんどについて生存菌数が検出限界以下であったが, P. aeruginosaの殺菌には50PPmが必要であった.有芽胞菌 (3種を検討) の場合, C. perfrigensとC. botulinumは含有塩素濃度60ppm, 作用時間1分で検出限界以下になった.B.subtilisは含有塩素濃度50ppm, 作用時間5分で検出限界以下になった.ウイルスに対する効果は50ppmではInfluenzavirus A/PR/8/34株, Semliki forest virusにおいては5秒, Adenovirus8型では15秒, Herpes simplex virus 1型HS株では1分, 2型KP株では5分以内で検出限界以下となった.Humanimmunodeficiency virus1型IIIB株においては30ppm, 5秒で検出限界以下となった.また, 応用として, 手指除菌効果の検討, 噴霧による実験動物飼育室の除菌効果の比較を行ったが, いずれも除菌効果があった.本弱酸性電解水は各種病原微生物に対して優れた殺菌効果があり, 安全で種々の用途への応用が期待される.