著者
藤枝 静暁 相川 充
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.371-381, 2001-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
38
被引用文献数
9 2

本研究の目的は, 学級単位の社会的スキル訓練 (Classwide Social Skills Training: CSST) を実施し, それが社会的スキルの程度の低い児童の社会的スキルの上昇に及ぼす効果を実験的に検証することであった。実験学級と統制学級を設定し, 各学級内の社会的スキルの程度の低い児童 (各10名) を対象とし, 彼らの社会的スキルを測定するために,(a) 社会的スキルの児童自己評定尺度,(b) 社会的スキルの教師評定尺度,(c) 5つの目標スキルの児童自己評定尺度を実施した。(a) と (b) は同一項目で構成され, 攻撃性・向社会性・引っ込み思案の3因子から構成されていた。これらの尺度は, CSST開始前から終了後まで計4回実施した。(c) は各目標スキルのCSST実施1週間前と1週間後に行った。(a) の結果からは, CSSTの有意な効果は証明されなかった。(b) の結果からは, CSSTの有意な効果が証明された。(c) の結果からは,「じょうずなたのみ方」スキル,「あたたかいことわり方」スキルにおいてのみ, CSSTの有意な効果が証明された。よって, 本研究ではCSSTの効果が明確に実証されたとは言い難かった。明確な効果が実証されなかった理由として, CSSTの実施方法, 目標スキルの選定方法, 夏休み期間中の児童への働きかけの欠如などが考察された。