著者
藤森 三男 大内 章子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.51-70, 1996-06-25

短期間で経済発展を成し遂げた日本の企業経営は,これまで良くも悪くも様々に評価されてきた。しかし,その本質は変わっていないのではないだろうか。技術・制度などは万国共通であっても,社会・文化が異なれば,それらをつなぎ合わせる企業経営は,その社会(あるいは国)によって異なってくる。本論文では,日本においてウチ社会が巧みに企業経営に用いられてきたのだとする。ウチ社会とは,長期的なカシカリの関係が公平に成り立つ社会のことで,「ウチ」とは家・家族を意味する,「ソト」に対立する語である。ウチ社会の中では,人々の間のカシカリの関係が心理的・非金銭的なものを含めて長期的に公平に保たれている。そこで,江戸時代末期から昭和期までの代表的な例を挙げて以上のことを検証していく。