著者
佐野 公俊 加藤 庸子 藤沢 和久 片田 和広 神野 哲夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.37-43, 1985

急性期破裂脳動脈瘤の治療方針は, 手術時期, 重症例の手術適応, 脳血管李縮の対策など幾多の問題が残され, 意見の統一をみない.<BR>本報告では, 本院にCTが導入され画像の安定した1976年9月から1982年8月までに当院に入院した315例の脳動脈瘤患者の死亡率, symptomatic vasospasmの発生率, 転帰につき, 24時間以内手術例と, それ以外の症例での推計学的検討を行った.<BR>死亡率は24時間以内手術例で82例中28例 (34%) と高いがそのうち26例はgrIV, Vの死亡例である.2週間以後の待期手術例では死亡率は142例中3例 (2%) と低く手術の安定性を示している.そこで24時間以内手術例82例と, それ以外の症例232例につき各重症度別に死亡率の有意差検定を行うと, 重症度がgrIVに近づく程, 24時間以内手術例が有意に優れていた.<BR>symptomatic vasospasmの発生率は, 24時間以内手術例及び2週間の待期中には8%~12%であったが, 48時間~2週間以内の手術例では40%前後と多かった.更に24時間以内手術例とそれ以外の例で推計学的有意差検定を行うと, 重症度がgrIIIに近づく程, 24時間以内手術例が有意に優れていた.<BR>転帰は神経学的重症度がgrIVに近づく程, 有意に24時間以内手術例が, それ以外の症例に比して優れていた.<BR>これらにより, grI, IIで脳底槽血腫の少ない症例に対しては, 再破裂防止の為の早期手術の適応であり, grIIで脳底槽血腫の多い例や, grIII, grIVの例では, クモ膜下出血の病態改善のための早期手術の適応であり, 重症例程, 24時間以内早期手術の絶対適応であるといえる.