著者
武井 浩樹 藤田 智史 山本 清文 中谷 有香
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

小児期では味蕾は成熟しているが,味覚情報を脳内に伝える脳神経線維や中継核はまだ発達途上である。したがって味覚を生み出す大脳皮質味覚野においても同様に発達が完了していないと考えられる。神経回路の発達が完了する「臨界期」の存在が大脳皮質視覚野で報告されているが,味覚野では未解明のまままである。そこで,脳内のニューロン活動を経過観察できるレンズをマウスに埋入し,種々の味覚物質を摂取させた際のニューロン群の発達に伴う発動パターンを数週間にわたり覚醒下にて計測する。また、視覚野の「臨界期」に重要な役割を果たすとされるBDNFの拮抗薬を投与するなどして,味覚野の「臨界期」を推定する。
著者
小林 真之 藤田 智史 越川 憲明
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.128, no.5, pp.309-314, 2006 (Released:2006-11-14)
参考文献数
8

Sharp grass electrodeを用いた細胞内記録法は,in vivo,in vitroを問わず多くの実験系で行われ,多くの成果を上げてきた.その一方で,現在,ニューロンの機能解析に関してはパッチクランプ法によるアプローチが全盛である.しかしsharp grass electrodeを用いた細胞内記録法には,細胞質のwashoutを最小限に抑えられること,成熟動物標本へ適用しやすいといったパッチクランプ法に勝る長所がある.また,記録細胞にbiocytin等を注入して染色する場合,sharp grass electrodeを用いれば細胞外への漏れがほとんどなく,極めて美しい標本を作成することが出来る.したがって細胞内記録法は,パッチクランプ法では得ることが困難な情報を引き出せる手法であり,お互いを相補的に用いることによって,より多くのニューロンの情報を解析することが出来る.本稿では,脳スライス標本を用いた細胞内記録法について,パッチクランプ法と比較しながらその手技を紹介する.