著者
藤田 益伸 小林 龍生
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第84回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PE-013, 2020-09-08 (Released:2021-12-08)

目的:教誨師とは刑務所等の矯正施設において受刑者の育成や精神的救済を目的とした講話や面接活動をする聖職者を指す。職業としての宗教教誨は一定の方法的自覚に基づき行われているが,教誨が心理学化していくとの指摘もある。本研究では対人援助の基本姿勢を比較しながら,教誨師の対面関係における態度の類似性と相違性について探究した。方法:2019年12月から3月に,教誨師1名を対象に半構造化面接を行った。面接は対面1回,電話4回で,所要時間は1回あたり1時間前後であった。調査内容は,教誨師としての活動状況,エピソード,心構え等である。得られたデータのうち対人援助能力に関連する内容を抽出,カテゴリー化してまとめた。倫理的配慮は所属機関の倫理規程を遵守し,秘密保持,個人情報の保護に努めた。結果:傷つき不信感をもった少年に対して,時所位・慈悲・灯明をもって接して感応道交へ至らしめていた。考察:教誨師の3姿勢が無条件の肯定的関心,共感,自己一致に対応していたことに加え,自他一如の価値観が根底にみられた点が特徴的といえる。