著者
浦上 達彦 花岡 陽子 藤田 英廣 北川 照男
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.631-637, 1986-07-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
21

小児インスリン依存型糖尿病患児4例に対して, 診断後早期に非修飾型免疫グロブリン製剤を400mg/kg, 4~5日間点滴静注する治療 (免疫グロブリン大量療法) を行い, その前後で食後2時間における血清C-peptide [以下CPRと略す], アルギニン負荷テスト [以下ATTと略す] におけるCPR反応, 1日インスリン必要量およびHbAlcを測定するとともに, その他若干の免疫学的検査を行って比較検討した.免疫グロブリン投与後, 全例において食後2時間における血清CPRの上昇を認め, ATTでも50%の症例でインスリン分泌能の改善を認めた. また4例中3例は診断後6~11ヵ月を経過しても0.5U/kg/day以下のインスリン必要量でコントロールが可能であり, 免疫グロブリン大量療法によって, 経過とともに本症の内因性インスリン分泌能が低下するのをある程度阻止し得るものと思われた.そしてこれらの機序は明らかではないが, 免疫グロブリン大量療法によって, 細胞性免疫系や抗体産生系に抑制効果をもたらすことが考えられるが, その他製剤中に含まれる抗Ia抗体や抗イディオタイプ抗体が免疫反応を抑制して臨床効果をもたらすのではないかと推測された.