著者
大和田 操 北川 照男
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.22-31, 2012 (Released:2012-07-03)
参考文献数
28

以前は、小児に見られる糖尿病は急激に発症する1型糖尿病(インスリン依存型糖尿病、IDDM)であると考えられてきたが、日本では1970年代、小中学生、即ち学童の尿糖検査による糖尿病集団検診が行われるようになり、成人期の疾患と考えられていた2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病、NIDDM)が少なくないことが明らかにされた。1型糖尿病の発生頻度が著しく低いわが国では、一般のみでなく、医療従事者の知識が乏しく、小児1型糖尿病の長期予後は、欧米に比べて極めて悪かったが、1980年代に入ると、小児糖尿病の国際研究が開始され、現在では、その予後が改善されてきた。一方、わが国からの報告以後、欧米においても小児2型糖尿病について関心が持たれるようになった。本稿では、これまでの40年間における、我が国の小児糖尿病臨床研究について概説したい。
著者
浦上 達彦 花岡 陽子 藤田 英廣 北川 照男
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.631-637, 1986-07-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
21

小児インスリン依存型糖尿病患児4例に対して, 診断後早期に非修飾型免疫グロブリン製剤を400mg/kg, 4~5日間点滴静注する治療 (免疫グロブリン大量療法) を行い, その前後で食後2時間における血清C-peptide [以下CPRと略す], アルギニン負荷テスト [以下ATTと略す] におけるCPR反応, 1日インスリン必要量およびHbAlcを測定するとともに, その他若干の免疫学的検査を行って比較検討した.免疫グロブリン投与後, 全例において食後2時間における血清CPRの上昇を認め, ATTでも50%の症例でインスリン分泌能の改善を認めた. また4例中3例は診断後6~11ヵ月を経過しても0.5U/kg/day以下のインスリン必要量でコントロールが可能であり, 免疫グロブリン大量療法によって, 経過とともに本症の内因性インスリン分泌能が低下するのをある程度阻止し得るものと思われた.そしてこれらの機序は明らかではないが, 免疫グロブリン大量療法によって, 細胞性免疫系や抗体産生系に抑制効果をもたらすことが考えられるが, その他製剤中に含まれる抗Ia抗体や抗イディオタイプ抗体が免疫反応を抑制して臨床効果をもたらすのではないかと推測された.