著者
藤谷 悠
出版者
日本オーラル・ヒストリー学会
雑誌
日本オーラル・ヒストリー研究 (ISSN:18823033)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.187-206, 2020 (Released:2021-12-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1

In Japanese, “Tojisha” means “the person concerned”. The author, who once had a long-term experience of Hikikomori (Social withdrawal), now conducts research on Hikikomori. As a part of this research, this time, the author analyzes a dialogue between the author and another Hikikomori. The theme of the dialogue is about “Hikikomori Studies”. However, before the dialogue took place, the idea of “Hikikomori Studies” was just nothing more than the author’s self-righteous idea. And, it was also an idea that excludes all but the Hikikomori parties. After the dialogue, the author hopes to change the form of “Hikikomori Studies” into another form for thinking with the people who are not “Tojisha” but are interested (They’re called “Kyojisha”). In addition to the analysis of the dialogue, this paper also provides a discussion based on the author’s auto-ethnography.
著者
藤谷 悠
出版者
言語文化教育研究学会:ALCE
雑誌
言語文化教育研究 (ISSN:21889600)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.339-359, 2019-12-31 (Released:2020-03-10)

東浩紀の『ゲンロン0―観光客の哲学』(2017)によると,現代の世界は,ナショナリズムとグローバリズムなど,様々な局面で二項対立的な「二層構造」になっているという。本研究は,国際性という文脈のみに単線化された結果,「二層構造」を生み出す要因となっている複言語・複文化の物語を,「本来の姿」へと回帰させることを目指している。単線化した複言語・複文化の物語の例として,「移動する子ども」研究を批判対象とし,同研究が暗示する「移動する子ども」と「移動しない子ども」の二項対立的構造を概観しながら,その間に中間的文脈を作り出すことを試みる。そうすることで,同研究における「移動」概念を拡張的に再定義する。これらの目的に向けたナラティブな調査として,日仏「ハーフ」の人々を対象としてライフストーリー調査を行なった。それに加え,筆者自身の「ひきこもり」経験をオートエスノグラフィーとして記述し,それをハーフたちの語りと交差させる。そうして,「ハーフ=移動する子ども」と「ひきこもり=移動しない子ども」との間に「部分的つながり」を見立てることで,複言語・複文化の物語を複線的な「本来の姿」へと蘇らせるのである。