著者
江島 由裕 藤野 義和
出版者
日本ベンチャー学会
雑誌
日本ベンチャー学会誌 (ISSN:18834949)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.25-39, 2019-03-15 (Released:2021-02-21)

本稿は、発達障害特有の資質がアントレプレーシップというコンテキストで大きく開花する可能性を学術的な視点から捉え展望している。世界では著名な起業家がADHD をかかえていることが逸話として知られているが、学術的な視点からの実態とメカニズムの解明は途に就いたばかりといえよう。本研究はこの開拓途上の領域に一石を投じる。実証分析に際しては、まず日本の発達障害をもつ起業家の現象と特徴を俯瞰した上で、次にそこから2 つのケースを抽出しその実態を描写し分析を加えている。起業や事業を軌道に乗せるプロセスで、発達障害という資質がどのように影響を与えているのかについて、探索型リサーチによる分析結果から5つの学術的含意とプロポジション(命題)を示す。
著者
藤野 義和
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第83集 新しい資本主義と企業経営 (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.G3-1-G3-12, 2013 (Released:2019-09-26)

本稿の目的は,武田薬品工業と塩野義製薬,そしてエーザイを事例に取り上げ,経営者交代と戦略の変化の関係性を考察し,同族経営者のあり方を議論することにある。 本研究を通して,まず構造転換を迎えた医薬品産業の実態が明らかとなる。その上で,武田薬品工業と塩野義製薬は同族関与の終焉という企業の歴史な転換を迎えた。特に武田は,同族経営者が積極的にその転換を主導したと解釈された。一方エーザイは,同族経営者が主導し常に時代を先取し自己革新を行ってきたことが明らかとなる。エーザイの同族関与の維持や転換にかんしては,現在進行中の事象であり議論するに留まる。 以上の事例にもとづき,今日でもいわば「チャンドラー・モデル」が有効な組織形態であることが確認される一方,Chandler が同文脈で示唆する経営者の専門性の変化を深く追求することが同族の維持や転換理由をひも解く鍵となることが確認される。