著者
有馬 淑子 畑谷 麻子(三浦 麻子) 行廣 隆次
出版者
京都学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究の研究組織は、京都学園大学では新しくネットワークゲームを開発して実験研究にあたり、大阪大学では既存のネットワークゲームを使用した応用研究を分担するものとして構成された。実験研究の主な目的は、仮想世界の中で相互作用を行わせるネットワークRPGの特質を生かして、新しい共有表象の形成過程を検討することであった。平成13年度はネットワークの構築と予備実験が実施された。平成14年度は本実験を行い、情報分配の初期条件とその共有過程が課題表象の形成に及ぼす影響を検討した。実験の結果、情報が早く伝達されるほど正解の認知を促進させるものの、集団の課題解決には結びつかないことが示された。また、2人条件と3人条件の集団過程には差異があり、3人条件の方が集団としての同調行動が発生しやすい傾向が見いだされた。他に、敬語や絵文字の使用傾向は集団内で同期しやすい、私的自己意識が高いほど操作しているキャラクターの外観に合わせた役割行動を取りやすい、などの結果が示された。さらに、各発話に対人関係・課題関連・場依存の3軸で重み付けを行う会話分析方法が開発して、対人認知との関連性が検討された。実験研究の成果としては、情報の共有だけでなく、場を共有しようとする集団過程が課題表象の共有に必要であることが示された。この結果は、社会的共有認知には、視覚的世界と言語的情報の双方が必要であることを示唆している。参与観察研究の結果、現実場面での社会的スキルは低いと認知していても、RPGゲーム場面では積極的に参加できた被験者が存在し、積極的に参加した被験者の自己評価は上がることが示された。この結果は、ネットワークRPGが社会的スキルトレーニングとして応用的な価値があることを示唆するものである。