著者
袴田 優子 田ヶ谷 浩邦
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.277-295, 2011 (Released:2017-02-16)
参考文献数
74

認知バイアスは,不安・抑うつの強い者が情報処理の過程で示す特定の偏り(バイアス)である。たとえば,抑うつの強い者は両義にとれるような曖昧な出来事を否定的に解釈する傾向にあったり,不安の強い者は否定的な刺激により注意を払いやすい傾向にあったりする。こうした傾向が著しい場合,うつ病や不安障害の発症・維持に密接に関与すると考えられてきた。この認知バイアスを緩和する「認知バイアス調整(CBM)アプローチ」は,従来の認知バイアス測定プログラムを改変して開発された,コンピュータに基づく新しい治療プログラムである。最近のメタ分析によりCBMは,不安や抑うつ症状を改善するうえで有効であったことが示されている。さらにCBMの効果は,プログラムのパラメータ設定(例:刺激の提示時間や種類)によって大きく影響されることも示されている。そこで本稿では,認知バイアス測定プログラムの精緻化および効果的なCBMプログラムの開発を目指し,最近報告された複数のメタ分析の知見を基に,認知バイアスを検出あるいは緩和するうえで最適なパラメータ設定を整理することを目的とする。
著者
袴田 優子
出版者
北里大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011-08-24

本年度は,研究費採択が決定した秋期~年末にかけて,本研究実施にあたり必要不可欠な研究環境のセットアップを済ませ,年明け~研究をスタートさせた.具体的に行った内容は下記の通りである.現在までに,12名の参加者から基礎データを得ており,うち4名が年度末~介入プログラムの実施を開始している.1)本研究課題について北里大学C倫理審査委員会に倫理審査申請を行い,2011年11月16日付で承認を受けた(C倫11-690).2)北里大学病院本院放射線科・教授とミーティングを重ね,核磁気共鳴画像(MRI)装置を機能画像(fMRI)実験について連携体制を整えた.また本学の診療放射線技師2名に撮像時のデータ収集協力を得た.3)大学本院MRI検査室に,fMRI実験課題中の脳活動を測定するために必用な反応記録装置(レスポンスパッド),そのケーブルを通過させる為の導波管の設置工事を行った(2011年12月).4)fMRI中に提示を行う実験課題を作成した(E-primeという心理学実験ソフトウェアを用いてDot Probe TaskおよびDual Task Designのプログラミングを行った).5)内分泌反応に詳しい独立労働安全研究所・研究員とミーティングを重ね,唾液コルチゾル検体キットの提供,および取得検体の解析について委託を依頼し,連携体制を整えた.6)その他,測定に必要な質問紙や認知機能検査を手配した.7)年明けより各学部の掲示板にチラシを掲示し,研究参加者募集を開始した.