著者
裴 虹 園山 繁樹
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.37-47, 2009-05-30

本研究では、日本と中国における知的障害児童生徒の選択行動形成の指導・支援の現状、および両国の異同点や共通した課題等を明らかにするため、両国の知的障害養護学校の教師(日本2,000名、中国411名)を対象に質問紙調査を実施した。その結果、両国とも選択行動形成の指導・支援が積極的に実施されており、選択行動形成の重要性に関する教師の認識も高いことが明らかになった。また、選択行動形成の指導はさまざまな形で知的障害養護学校に取り入れられており、その内容が個別指導計画に取り入れられている割合も高いことが示された。さらに、選択行動形成の指導・支援は、さまざまな方法によって実施されていることも明らかになった。両国を比較すると、選択行動形成の指導・支援に関する認識や実施の程度は日本のほうが高く、選択行動形成の指導・支援に関する学校・家庭・地域の連携に関する意識や実施状況は中国のほうが比較的高かった。このことから、知的障害児童生徒の特性にそった有効な支援方法、および学校・家庭・地域の連携のあり方について、両国で研究・実践の交流がなされることが望ましいと考えられた。
著者
裴 虹 園山 繁樹
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.505-516, 2012 (Released:2013-09-14)
参考文献数
16

本研究では、選択行動を一連の行動連鎖ととらえた「選択行動アセスメントマニュアル」を作成し、中国の知的障害特別支援学校1校で実際に適用し、その社会的妥当性を検討した。教師22名に本アセスメントマニュアルを、学校の多くの日常場面において、担当する知的障害生徒22名に適用してもらい、適用後に、教師に対して、「記録表の内容」「記録表の記入」「アセスメントの実施」「アセスメントの効果」「アセスメントマニュアルの合理性」の5項目に関する社会的妥当性評価のアンケート調査を実施した。その結果、選択行動アセスメントマニュアルはおおむね妥当であったと評価されたが、記録表の記入が難しかった教師も少数あり、記録の仕方やアセスメントの実施により、時間がかからないような工夫が求められた。今後は、本アセスメントマニュアルを適用した指導事例の検討を行い、その具体的な有用性と使用方法を検討する必要がある。