著者
山下 勝 西光 伸二 稲山 栄三 吉田 集而
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.88, no.10, pp.818-824, 1993-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
26
被引用文献数
2 2

1. 回分発酵式口噛醪においては, 特別な酵母集積法を使用しない場合, 酵母の増殖に約5日, 発酵に約5日, 合計10日位の醪日数を必要とし, 短時日にアルコールを生成することはなかった。しかし, 前醪利用方式や連醸方式を利用すると, 3~5日の短時日で1~5%のアルコール生成が可能となった。大部分の口噛酒は, 後者の方法を利用していたものと推察できた。2. 唾液アミラーゼ活性に男女間の有意差はなく, 男女別口噛醪でも生成アルコールに有意差はなかった。3. 口噛時間3分で精白生米では約2%, 精白蒸米では約6%の還元糖が生成した。また, この3分間の口噛の間に, 口噛前米量の約200~300%の唾液が加わることが認められた。4. 口噛酒に関与する微生物としては, 唾液中に数十/mlの酵母と107/mlの乳酸菌が常に存在し, 発酵に関与した。この他に, 生米を使用した場合には, 生米中の酵母 (102~103/ml) が発酵に関与した。男女が学生は全般に唾液中の酵母数が少なく, 発酵性酵母を持っていない人も半数位認められた。唾液中の酵母数は個人差が大きかったので, 朝のハミガキの影響はないか調べたところ, ハミガキの影響は少なく, 酵母数の少ない人は常に少ない傾向が認められた。5. 生成した口噛酒は, デンプン質が多く残存しているために泥状を呈し, 酸が多いために多少すっぱめであり, アルコール量は1~5%位と少量であった。