著者
福留 脩文 有川 崇 西山 穏 福岡 捷二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.490-503, 2010 (Released:2010-10-20)
参考文献数
14

高堰堤式落差工の存在は,多くの場合,魚類の遡上や降下を妨げ,瀬や淵の環境を失わせてきた.著者らはこの問題を改善するため,渓流に見られる天然段差をモデルに,福岡県岩岳川の河床に大小の転石を組む低い分散型落差工群を試作した.その基本形に石造アーチと,流体中の静止物体の安定理論を応用し,施工には日本の伝統的な石垣工法を用いた.完成後,洪水前後の河道状況を調査し,施工した石組み構造の変化について観察した.その結果,構造の要となる大石が安定すれば,大石間に組んだ石礫は変化しても,上流から石礫が補給されて段差は復活または新たに再現されていた.自然から学んだ河床構造と簡単な解析の設計法による試験施工の結果,分散型落差工を設置した河床は,洪水で変形しつつも安定し,瀬と淵も河床高も維持されたことを確認できた.