著者
増成 友宏 清水 則一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.437-447, 2007 (Released:2007-10-19)
参考文献数
21
被引用文献数
4 4

GPS(Global Positioning System)による変位計測の信頼性を向上させるためには,計測結果から真の変位と計測に混入する誤差との識別を行い,誤差を補正することが重要である.本研究では,GPS変位計測における誤差要因のうち,最も影響の大きいと考えられる気象条件による大気圏遅延について,その補正方法を検討し,気象補正が可能な基線解析プログラムを開発した.そして,実際の計測結果に適用しその妥当性を検証した.
著者
桐山 久 高畑 陽 大石 雅也 有山 元茂 今村 聡 佐藤 健
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.612-622, 2010 (Released:2010-11-19)
参考文献数
23

石炭系炭化水素に由来するベンゼン汚染が帯水層まで拡がった石炭ガス製造工場跡地に対して,既存の原位置浄化技術の適用性を評価した.透水性が比較的小さいなどの地盤特性からエアスパージング工法が適していると判断されたが,第二帯水層への適用方法と浄化期間の短縮方法が課題となった.そこで,二層式井戸を用いたエアスパージング工法を採用し,揚水循環併用バイオスパージング工法を当該工法の実施後に適用した.その結果,約2年間で地下水中のベンゼン濃度は環境基準値近くまで低減し,ベンゼン除去率は99.9%以上に達した.実サイトにおける浄化速度を評価して浄化予測手法の検証を行った結果,スパージング風量,通水量と地下水中のベンゼン濃度には相関関係があり,詳細な浄化予測を行うことが可能と判断された.
著者
桐山 久 高畑 陽 大石 雅也 有山 元茂 今村 聡 佐藤 健
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.555-566, 2009 (Released:2009-12-18)
参考文献数
34
被引用文献数
1

バイオスパージング工法は,ベンゼンで汚染された深部の土壌を浄化する場合に有効な浄化技術である.本工法は,帯水層中に空気を供給することにより,ベンゼンの気化による物理的除去と微生物分解の促進を期待できる.しかし,これまで栄養塩の効率的な供給方法が存在しなかったため,継続的な微生物分解効果を得ることが困難であった.そこで,筆者らは栄養塩を地盤に効率的に供給できる揚水循環併用バイオスパージング工法を開発した.実汚染サイトにおいて実証試験を行い,当工法によるベンゼンの浄化効果と空気や栄養塩の供給能力について検討し,従来工法と比較した優位性を確認した.また,本試験の結果に基づき,当工法の井戸配置や浄化期間予測についての設計手法を確立した.
著者
有冨 孝一 上坂 克巳 柴崎 亮介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.623-634, 2010 (Released:2010-12-20)
参考文献数
56

図面による土木構造物のモデル化は,寸法値により設計意図を適切に表現できる.しかし,図面上の座標値は,表現できる精度が用紙の大きさにより制約を受けるので,実寸大の座標値を正確に再現できない.また,平面直角座標系による座標値は地球の曲率による縮尺補正,標高差による投影補正が必要である.しかし,これらの補正では1万分の1の精度までしか補正できず,標高軸が現場の標高軸と異なる.  本研究は,土木構造物の3次元設計モデルを,地球を3次元多様体空間と仮定し,任意の地点で地表の水平面が重力方向の方向軸と鉛直な3次元直交座標系を使用でき,設計長と実測延長と比較検証して一致することを示した.
著者
高山 博文 増田 康男 仲山 貴司 植村 義幸 Narentorn YINGYONGRATTANAKUL 朝倉 俊弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.132-145, 2010 (Released:2010-03-19)
参考文献数
16

NATMで施工された覆工コンクリートでは,トンネル天端付近において軸方向に伸びるひび割れがしばしば確認されている.このひび割れは地圧によるものと類似するため,維持管理段階における健全度評価を困難なものとしている.本研究では,このひび割れの発生メカニズムを明らかにするため,実際の坑内環境と施工条件を模擬した模型試験とそのシミュレーション解析を実施した.この結果,吹付けコンクリート面の凹凸などによる外部拘束がない現在の覆工コンクリートにおいて,ひび割れの発生に寄与すると考えられるコンクリート自身が発生させる内空側と地山側との収縮量の差(内部拘束)を数値解析で適切に表現するためには,「湿気-応力連成解析」を行う必要があることを示した.
著者
本城 勇介 諸岡 博史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.1-13, 2010 (Released:2010-01-20)
参考文献数
18

社会基盤施設に関連した事故に関する判例などが報道されると,工学で考えられている設計問題の枠組みと,法律で規定されている枠組みに差があることを感じることがある.本研究はこのような法律の考え方と,設計の考え方の関係を明確にし,社会基盤施設に求められる安全性や技術者の責任を明らかにすることを目的とする.判例を検討していると,瑕疵に関する考え方も,徐々に安全性が相対的なものであるという認識に変化していると思われる.判例は依然通説である「客観説」をとっているが,その判断にあたり,予見可能性,回避可能性など技術的見識を加え,結果の重大性や構造物の重要性などを多面的に勘案するようになってきていると思われる.
著者
小林 潔司 石原 克治 田澤 龍三 徐 飛
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.130-147, 2008 (Released:2008-04-21)
参考文献数
31

本研究では,土壌汚染に関する表土調査の結果に基づいて,土壌汚染浄化費用リスクを評価するためのベイズニューラルネットワーク(以下,BNNと略す)モデルを提案する.具体的には,伝統的なニューラルネットワークモデルを用いて,土壌汚染浄化費用モデルを作成する.ついで,ニューラルネットワークモデルをベイズ推計することにより,重み係数の事後確率分布を求める.これにより,土壌汚染に関する表土調査の結果に基づいて,調査対象地点における土壌汚染処理費用の確率分布(土壌汚染浄化費用リスク)を求めるBNNモデルを提案する.さらに,新たに獲得した土壌汚染サンプルを用いて,BNNモデルを更新する方法論も提案する.最後に,土壌汚染浄化費用の実測サンプルを用いてBNNモデルの有効性について実証的に検証する.
著者
高野 伸栄 倉内 公嘉 荒木 正芳
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.284-298, 2009 (Released:2009-07-17)
参考文献数
26
被引用文献数
2

本研究は公共工事の入札制度が抱える問題点を踏まえ,住民が当事者意識を持ちつつ,内容を理解しやすい公共工事に対して,住民参加型入札制度の導入を提唱し,模擬入札実験を通して,その可能性を検証したものである. まず,アンケート調査の結果,住民は工事を行うにふさわしい業者として,価格以上に質を重視し,発注者が求めるものと大差がない一方,公共工事の入札に対する印象は不信感が強いことを明らかにした.次にその解決にあたり,住民参加型入札制度を提唱し,その効果と課題を考察した上で,模擬入札実験を行い,住民は一定条件の下では建設業者を合理的に評価することが可能である,本制度の適用により,入札制度に対する意識が変化する可能性がある等の結論を得,住民参加型入札方式が入札制度の改善に有効な方法である可能性を示した.
著者
剣持 三平 竹津 英二 依田 淳一 小池 真史 亀村 勝美
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.225-238, 2007 (Released:2007-06-20)
参考文献数
23

トンネル掘削における初期変位量と収束変位量の関係は,従来,掘削工法や支保工の仕様に関わらず一本のラインで描かれることが多い.しかし,トンネルをより安全かつ合理的に施工するためには掘削工法により変化するトンネルの変位量を精度よく予測し,制御する必要がある.本研究では,膨圧性地山を掘削する長大トンネルで得られた内空変位計測の結果から掘削工法および支保工の仕様の違いが初期変位量と収束変位量の関係に及ぼす影響を定量的に明らかにし,それらを利用した掘削管理手法について提案する.
著者
坪田 邦治 中島 啓 西垣 誠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.323-334, 2007 (Released:2007-08-20)
参考文献数
16

兵庫県北部の豊岡盆地では,沖積粘性土地盤が厚く堆積しており,盆地の中央を北上する1級河川である円山川の築堤工事に際しても,市街地周辺では,近接している民家に対して,築堤盛土に伴う周辺地盤沈下の抑制が大きな課題とされてきた.本論文では,対策工として,深層混合処理工(CDM工法)を選定し,対策工による沈下抑制効果の予測および試験盛土の動態観測結果との対比により,予測計算の有効性および対策工による沈下抑制効果が高いことが確認できた.この結果,対策工の設計に際して,改良深度,改良幅,改良強度と周辺家屋の傾斜角が関連する対策工の最適化設計チャートについて新たに提案するとともに,対策工の施工時の変位抑制のために施工した緩衝孔の効果について論じる.
著者
福留 脩文 有川 崇 西山 穏 福岡 捷二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.490-503, 2010 (Released:2010-10-20)
参考文献数
14

高堰堤式落差工の存在は,多くの場合,魚類の遡上や降下を妨げ,瀬や淵の環境を失わせてきた.著者らはこの問題を改善するため,渓流に見られる天然段差をモデルに,福岡県岩岳川の河床に大小の転石を組む低い分散型落差工群を試作した.その基本形に石造アーチと,流体中の静止物体の安定理論を応用し,施工には日本の伝統的な石垣工法を用いた.完成後,洪水前後の河道状況を調査し,施工した石組み構造の変化について観察した.その結果,構造の要となる大石が安定すれば,大石間に組んだ石礫は変化しても,上流から石礫が補給されて段差は復活または新たに再現されていた.自然から学んだ河床構造と簡単な解析の設計法による試験施工の結果,分散型落差工を設置した河床は,洪水で変形しつつも安定し,瀬と淵も河床高も維持されたことを確認できた.
著者
馬場 弘二 伊藤 哲男 佐野 信夫 谷口 裕史 杉山 律 福留 和人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.285-295, 2006 (Released:2006-04-21)
参考文献数
17

トンネル覆工コンクリートの耐久性向上を図る上で,ひび割れの発生を低減することが重要である.本研究では,覆工コンクリートの乾燥収縮に起因するひび割れの抑制手法を検討することを目的に,ひび割れ発生に影響を及ぼすと考えられる要因のうち,養生条件,使用材料および拘束条件を取り上げ,覆工コンクリートを模擬したモデル試験体を用いたひび割れ発生程度の比較試験による評価を行った.その結果,養生条件では,散水養生が,使用材料では,膨張材がひび割れ抑制に有効であること,また,防水シート敷設による拘束低減効果が大きいことも明らかとなった.さらに,覆工コンクリート背面および脚部の拘束条件の違いによる影響について,実トンネルを模擬した2次元FEMによる応力解析を行い検証した.
著者
石井 博典 藤野 陽三 水野 裕介 貝戸 清之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.44-61, 2008 (Released:2008-02-20)
参考文献数
21
被引用文献数
2 5

本研究では,主に合理的な維持管理を必要とする中小鉄道を対象として,高頻度な計測が可能な軌道モニタリングシステム(Train Intelligent Monitoring System:TIMS)の開発を行った.営業車両内に加速度計,GPSで構成される簡易な計測システムを設置し,走行中の車両振動から軌道の状態を常時監視するシステムを構築し,地方鉄道において継続的な実験を実施した.GPSセンサから得られる速度情報と,車両加速度を2回積分して得られる距離情報を補完しあうことにより,車両走行位置を検出する位置同定手法を開発した上で,車両の上下,左右方向の加速度の最大値,RMS値を管理することにより,軌道状態を高頻度で監視することが可能な軌道モニタリングシステム(TIMS)を構築した.
著者
木幡 行宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.618-627, 2006 (Released:2006-10-20)
参考文献数
25
被引用文献数
4 6

流動化処理土は,各種構造物の裏込めや地中構造物の埋戻しの際に適切な締固めができない場合に対して建設発生土を有効に利用するために開発されたものであり,締固めが不要で適度な流動性を持たせた泥状の土に固化材を適量に混合して固化効果を期待することが基本概念である.近年,社会的に再資源化が大きな時流となり,都市部で流動化処理土が広く利用されるようになってきた.本論文では,流動化処理土の実績と動向を概観し,埋戻し材として用いられる低強度の流動化処理土とシールドトンネルのインバート材に用いられる流動化処理土の力学特性を概説するとともに,靭性を改善して耐震性を向上させるために繊維質材料を流動化処理土に混合した繊維材混合流動化処理土の力学特性を述べる.また,今後の流動化処理土における課題について述べる.
著者
津田 尚胤 貝戸 清之 山本 浩司 小林 潔司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.473-491, 2006 (Released:2006-07-20)
参考文献数
41
被引用文献数
4 5

土木施設のアセットマネジメントにおいて,土木施設の劣化予測が重要な課題となる.現実には,劣化状態に関する点検データが十分でなく,劣化予測モデルの推計精度が十分でない場合が少なくない.その際,技術者の経験的知識等を劣化予測に活用するとともに,新しく利用可能になった点検データに基づいて,劣化予測モデルの推計精度を逐次改良するような方法論が必要となる.本研究では,土木施設の故障の有無を予測するためのワイブル劣化ハザードモデルを,新しく利用可能になった点検データに基づいてベイズ推計する方法論を提案する.その際,マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いて,未知パラメータの事後分布を効率的に推計する方法を提案する.さらに,トンネル照明ランプを対象とした適用事例を通して,提案した方法論の有効性について考察する.
著者
大石 博之 小林 央宜 尹 禮分 田中 浩一 中山 弘隆 古川 浩平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.107-118, 2007 (Released:2007-03-20)
参考文献数
3
被引用文献数
1

斜面の災害危険度を評価することは,効率的に防災事業を進めるための重要な課題である.これについては詳細な調査や安定解析に基づいた評価を個別に行うことが望ましいが,対象数が膨大であるため困難となることが多い.そこで,本研究では数理的手法のひとつであるサポートベクターマシンを活用し,各斜面の諸元データと災害履歴を学習することで災害危険度を評価することを試みた.道路沿線斜面のデータを例とした分析では,従来法以上の高い精度で危険度が評価できることが判明した.また,既に対策済みの斜面については,無対策斜面データのみの学習結果に基づく評価と対策済み斜面のみでのそれとを比較することで,対策工効果の指標値を得ることを発案した.これらの成果は,防災事業を進めていく上で大変有効なものと考えられる.
著者
有賀 貴志 矢吹 信喜 城古 雅典
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.432-446, 2010 (Released:2010-08-20)
参考文献数
11

土地造成工事や道路工事を行う際,切土と盛土のバランスを考慮した土量配分と土砂の運搬距離が最短となるよう繰返し検討が行われる.2次元の設計図を用いる従来の方法は,平面的な収まり,擁壁等の設置の判断は技術者の能力や経験に依存し,また土量計算は複数の検討案に対して繰返しの作業が生じるため多大な労力と時間を要する.本研究は,安価で汎用性のある土工シミュレーションツールの開発を目的とし,フリーソフトの3次元CADおよび汎用表計算ソフトを用いた「ブロックモデル」による土工シミュレーションおよび積算に関するシステムを開発した.さらに,サンプル地形を対象として,土工シミュレーションを行い,ブロックモデルの操作による完成形状の確認,プログラムによる土工分類の判定,積算および工程表の作成までできることを示した.
著者
島田 敬 山下 達雄 山本 正生 竹林 幸治
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.556-566, 2010

これまで,滑走路等の建設工事では,舗装工事と航空灯火設置等の電気工事とを別々に施工する方法が採用されてきた.関西国際空港第2滑走路工事では,「航空灯火基台設置と舗装の一体施工法」及び新型の「航空灯火基台」を考案・開発し,現地実験等を行い実施工に採用した.これにより,第2滑走路工事において,工期短縮,建設コスト縮減,環境保全の課題解決に大きく貢献することができた. </br> 本研究は,「航空灯火基台設置と舗装の一体施工法」を実用化するために行った灯火基台開発及び現地実験を総括するとともに,工期短縮,建設コスト縮減,環境保全効果について分析を行ったものである.
著者
菊本 智樹 川端 信義 丸山 大輔 山田 眞久
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.448-459, 2007

本論文は,小型道路トンネル火災の熱気流(煙)挙動特性について,3次元シミュレーションを行い検討したものである.シミュレーションの小断面トンネルに対する再現性は,火災模型実験との比較から確認した.また,小型道路トンネルの想定火災である乗用車の発熱速度(熱対流成分)および煙発生速度は,既往の実大火災実験に対してシミュレーションを試行錯誤し,それぞれ1.8MW,9g/s(最盛期)と決定した.小型道路トンネルにおける乗用車火災のシミュレーションから,普通道路トンネルに比べて煙が短時間・短距離で降下し,充満しやすいが,煙先端の移動速度は普通道路トンネルのバス火災時より遅く,普通乗用車および大型乗用車の単独火災時にそれぞれ最大で約0.8m/s,約1.0m/sであることを明らかにした.
著者
櫻井 春輔 清水 則一 芥川 真一 吉田 秀典 佐藤 稔紀 山地 宏志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.662-673, 2006 (Released:2006-12-20)
参考文献数
25
被引用文献数
1

超大深度地下開発のアプローチとなる超大深度立坑は,その重要性を再認識されつつある.しかし,国内石炭産業の縮小に伴い,深度1,000m級の立坑はほぼ20年以上施工されていない.筆者らは超大深度立坑技術の継承と,定量的な立坑設計技術の確立を目的として,過去に施工された超大深度立坑の技術文献調査,およびかつて施工に従事された技術者からの聞き取り調査を実施し,立坑工事において発生する蓋然性の高い崩壊形態を調査した.その結果,立坑における崩壊のほとんどは高抜けと異常地圧による覆工破損の二つに分類されることが明らかとなった.さらに,その発生状況を検証したところ,この二つの現象は同じ原因により発生するものと判断された.