著者
西村 勇人
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.257-265, 2016-05-31 (Released:2019-04-27)
参考文献数
11

近年、不登校の治療において機能分析に基づくアセスメントと介入が注目を浴びており、Kearneyらは不登校行動を四つの機能に大別している。本稿で報告する2事例は、不登校行動がもつ機能に注目してアセスメントを行った結果、否定的感情を喚起する学校関連刺激からの回避、社会的・評価的状況からの回避という機能を共通して持っていると想定された。これに対して共通してエクスポージャーやSSTを行い、事例1に対しては認知的介入も行った結果、学校に対する不安感が減少し、再登校が可能になった。同じ機能をもつ2事例の比較を通して、エクスポージャーやSSTの有用性についてや、どのような事例の差異に注目して技法を選択・運用していくかについて、考察を加えた。
著者
西村 勇人 橋本 桂奈 水野 舞 佐藤 充咲
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.217-224, 2022-05-31 (Released:2022-07-28)
参考文献数
16

本研究では自閉スペクトラム症・注意欠如多動症のいずれか、もしくは両方の診断を受けた子どもの親グループに対する短縮版のペアレントトレーニングの有効性について検討した。プログラムは全5回で(1)ターゲット行動の選定と観察の方法、(2)適切な強化の仕方、(3)課題分析と環境の工夫、(4)トークンエコノミー、(5)消去とまとめ、で構成された。参加した22名の親の子育てストレスと抑うつ症状の変化を測定し、目標行動がどの程度達成されたか評定してもらった。分析の結果、子育てストレスは有意に低下したが、抑うつの低下については有意傾向であった。親の報告によるターゲット行動の達成度は74.29%であり、子どもの行動にも一定程度の変化が見られたと親は評価していた。これらの結果より、対象を特定の疾患に限定せず短期間で終了するという、親がより参加しやすいペアレントトレーニングの可能性が示された。
著者
西村 勇人
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.45-54, 2013-01-31 (Released:2019-04-06)
参考文献数
12
被引用文献数
1

本研究では、母親と分離することや担任・クラスメイトに会うことに対して不安や恐怖感を抱き、5年間母親同伴で登校をしていた小6男児に対して認知行動療法的な介入を行った。本児の行動は母親からの分離行動の形成が不十分であること、母親からの注目獲得、担任やクラスメイトへの不安の回避という要因によって影響を受けていると考えられた。そのため、母親からの分離行動のシェイピングや学校関連刺激への段階的エクスポージャーを行った。その結果、小学校在学中に単独で授業に出席できるようになり、中学進学後は学校への全面復帰が可能となった。その後も病欠以外で連続欠席することなく2年生に進級することができた。この事例を通して、不登校の治療におけるエクスポージャーの有用性やさまざまな技法を組み合わせて介入することの必要性について論じた。