著者
西村 博之 江口 朝子 池田 亜須香 井島 廣子 川口 はるみ 橋口 和子 石塚 洋一 陣内 秀昭 陣内 冨男
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.217-221, 2007 (Released:2009-05-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1

インスリン自己注射によるlipohypertrophy(以下,LH)は,限局した部位への皮下注射により形成され,インスリンの吸収障害の一因になる事が懸念される.LH形成は臍の両側に多く観察されることを経験するが,実際にどの部位にLHが好発するのか,またその原因については明らかでない.そこでLH形成部位と自己注射部位の関連を調べる目的で,患者対象の調査を実施した結果,腹部でのLH形成は臍の横とななめ下に多かった.この理由として,同部位が手技的に自己注射しやすいだけでなく腹部でも穿刺時痛の少ない部位のため限局して注射している可能性を考え,次に健常者対象の腹部部位別の穿刺時痛比較試験を実施した結果,臍の横とななめ下で穿刺時痛が少ないことがわかった.これらの結果より,腹部でのLH形成は臍の横とななめ下が多く,その理由として穿刺時痛の少ない部位を無意識に選択して注射していることが一因と考えられた.