著者
西村 輝子
出版者
島根県立大学短期大学部
雑誌
島根女子短期大学紀要 (ISSN:02889226)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.27-32, 1971-03-28

1.44年度島根県国民栄養調査一八束郡八雲村-の資料について栄養摂取量,食品群別摂取量と食材料費の相関を検討した結果,各栄養素のうち正の相関の大きいものは,全蛋白質,熱量,動物性蛋白質,Ca,鉄等である。やゝ相関の認められるものは,脂肪,炭水化物であり, Vitamin類は全く相関が認められなかった。相関度の低い栄養素に対しては,特に給源食品選択が必要であり強化食品・強化剤等の合理的導入が望まれる。食品群別摂取量と,食材料費の相関について見ると,魚介類においては相関が大きく,その他の野菜類,卵類,肉類はやゝ相関が見られる。穀芋類,砂糖,油脂類,大豆類,果実類,緑黄色野菜,菓子,乳類では相関を認めなかった。2.同標本から得た関係を基に50年目途栄養基準量(1人1日当り)を満足する為の食材料費を推定して見ると,95%信頼区間248〜318円が必要である。また,食材料費100円,200円,300円,400円から得られる食品群別摂取量を算出した。更に,50年目途栄養基準量を満す将来の95%予想区間を算出した結果182〜384円を得た。また,前述の食材料費別から得られる食品群別摂取量の将来の予想区間を算出した。今後,社会経済機構が複雑多様化する現代において,社会的要因を抜きにしての平均的栄養摂取量のみの観察から栄養指導対策は得られない。特に都市農村を問わず,食生活に最も影響を与える経済因子即ち消費構造と食費の適正使用,又それの栄養に及ぼす影響は主要な問題であろう。今回は実態を基に栄養所要量,食糧構成基準を満す食材料費の限度について統計的に検討を試みたが,食材料費を効果的に運用する為に,今後,食品の単価との関連における適切な食糧構成による,食材料費目構成の分析,使用食品,実施献立の分析等を嗜好の満足との関連のもとに検討して行きたい。終りにあたって,格別の御指導御協力をいたゞいた松江工業高等専門学校,新宮忠雄教授,並びに松江保健所,中尾・山根栄養士に厚く感謝いたします。