著者
新原 立子 西田 好伸 米沢 大造 桜井 芳人
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.423-433, 1973 (Released:2008-11-21)
参考文献数
10
被引用文献数
3 2

(1) 製造中における手延素麺の水分含量は,梅雨期の“厄”において上昇して, 15%以上となった. (2) エーテルおよび水飽和ブタノールで抽出される脂質の量は,ともに貯蔵中に減少した. (3) 過酸化物価,カルボニル価は製麺時に上昇し,貯蔵中は15カ月間あまり変化せず,ヨウ素価,リノール酸の比率がやや増加する傾向がみられた.このように,素麺の脂質は酸化に対して安定であった.一方厄中の変化として,酸価の上昇がみられた. (4) タンパク質の溶解性はほとんど変化せず, 2回目の厄を越えた時点でやや減少した.アンモニア,アマイド窒素もほとんど変化はみられなかったが, 1回目の厄で10% TCA可溶の窒素量の増加がみられた.そして遊離のアミノ酸も, 1回目の厄で増加した.しかし油の酸化の始まる2回目の厄には,遊離のアミノ酸の減少がみられた.総アミノ酸には貯蔵中顕著な変化はみられなかったが, 2回目の厄後すべてのアミノ酸がやや減少した.また2回目の厄後,グルテンのデンプンゲル電気泳動図に変化が認められた. (5) 素麺からとれる湿グルテンの猛状が貯蔵中に変化し,生麺およびゆで麺の吸水率が低下した. (6) テクスチュロメーターによる測定では,ゆで麺のかたさが1回目の厄を越すことによって増加した.一方,凝集性は2回目の厄を越して初めて有意差のある低下が認められた.また粉末のファリノグラムも,貯蔵期間とともに変化した. ゆで麺の顕微鏡観察では,厄を越えた素麺はデンプン粒の膨潤が抑制されていることが観察された.