著者
有内 和代 楊河 宏章 宮本 登志子 井村 光子 西矢 昌子 中西 りか 苛原 稔
出版者
徳島大学医学部
雑誌
JNI (ISSN:13483722)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.99-105, 2005-03

治験は医薬品の開発において必須であり,その過程では逸脱を防ぎ,データの質を確保することが必要である.CRC(clinical research coordinator)の立場から,治験依頼者と医療機関の意思疎通のためのミーティングをより効率的に活用し,治験の品質の向上を行うためのチェックリストを作成した.T大学病院臨床試験管理センターのCRCがこれまでのミーティングにおいて経験した問題点を抽出し,それらを統合してミーティングチェックリストの原案を作成した.原案を平成16年5月~6月に治験が開始された6件において主担当CRCが使用し,必要時には修正,補充を行い,それらを追記内容として直接チェックリストに記載した.治験開始後にこれらのチェックリストを回収し,追記内容等について検討した.詳細な追記は,除外基準や費用の負担(特定療養費の期間に関する規定,入院時の取り扱いなど)などの項目で見られた.画像の取り扱い,同種同効薬と併用禁止薬,条件付き可能薬の一般名表記等においても指摘があった.追加項目として受託事例数が,修正項目として表記方法やレイアウトについての意見があった.これらを総合的に評価し,またあまりに詳細なリストは実用的ではないという意見なども取り入れ,除外基準は疾患名を列記しチェックする形に,また検査,投薬に関しては詳しい内容とするなどの変更を加え,最終的なチェックリストとした.治験における逸脱の原因として,治験依頼者,治験責任医師の間での記載内容の解釈の微妙な不一致の関与の可能性が指摘されている.その克服にはCRCが中心となった品質保証のシステム化が必要であり,今回作成したチェックリストの活用などが有用と考えられる.今後は逸脱防止を目的とし,チェックリストの改良や活用法の検討を重ね対応するとともに,チェックリスト使用の有用性に関する評価を行う予定である.