著者
苛原 稔
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.23-29, 2022 (Released:2022-05-19)
参考文献数
9

Since 2014, more countries have been doing uterine transplants after the world’s first report of a uterine transplant delivery by Professor Brännström’s team in Sweden. Even in Japan, although it has not been applied to humans, transplantation technology has reached a certain level and has reached the stage of preparing for clinical application.The target of uterine transplantation is a patient with a uterine defect disease who desires fertility treatment, and congenital uterine defect (Mayer-Rokitansky-Küster-Hauser syndrome) can be considered as a consensus. In actual practice, it is important to consider the following points.1. There are still unresolved issues to be considered and a clinical trial study should be conducted.2. The choice of donor should be careful. This is because it is necessary to perform highly invasive surgery on a healthy donor in order to perform this technique. Brain death transplantation is also possible, but the hurdles are high in Japan. Therefore, living body transplantation is the main focus.3. As for the conditions of the recipient, it is necessary to consider that the patient can obtain a pregnant egg, that she is of an age that allows pregnancy and delivery, and that she and her partner desire fertility treatment.4. In addition, it is necessary to consider the level of medical facilities and what to do about the necessary expenses.While solving these problems, it is necessary to carry out cross- medical society efforts and proceed with preparations.
著者
桑原 章 檜尾 健二 山野 修司 苛原 稔
出版者
JAPANESE SOCIETY OF OVA RESEARCH
雑誌
Journal of Mammalian Ova Research (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.59-63, 2005 (Released:2005-06-04)
参考文献数
25

子宮外妊娠は補助生殖医療(ART)による妊娠の約5%に起こることから,その予防が重要な課題である.近年,胚盤胞移植により子宮外妊娠の頻度が減少する可能性が指摘されている.初期胚移植に比べて,胚盤胞移植では移植から着床までの期間が短いこと,また子宮の収縮が胚盤胞移植時期に少ないことから,移植胚が卵管へ輸送される可能性が低い胚盤胞移植は子宮外妊娠予防に有利とされる.一方,不妊原因である卵管因子の有無は子宮外妊娠の発生頻度に影響を与える.ART症例で卵管因子を有する症例の子宮外妊娠率は卵管因子の無い症例に比べて高い.胚盤胞移植と子宮外妊娠の関連を検討した報告では,卵管因子をもつ症例では初期胚移植に比べ胚盤胞移植で子宮外妊娠の発生が少ないが,卵管因子を持たない症例ではこの傾向は認められない.卵管因子をもつ症例にARTを行う場合,移植時期を胚盤胞期にすることで子宮外妊娠の予防が期待される.
著者
松崎 利也 苛原 稔
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.490-493, 2009-04-10

[1]多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS)の不妊治療とメトホルミン メトホルミンは,ビグアナイド系の経口血糖降下薬であり,その作用機序は肝臓における糖新生の抑制,末梢での糖利用の促進,腸管での糖吸収抑制など多彩である.PCOSで病態が改善するのは,インスリン抵抗性の改善により血中インスリン値が低下し,その結果,インスリンで促進されている卵巣のアンドロゲン産生が低下することが主な作用機序である1).
著者
立花 綾香 加地 剛 七條 あつ子 高橋 洋平 中山 聡一朗 中川 竜二 前田 和寿 早渕 康信 香美 祥二 苛原 稔
出版者
日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.155-159, 2016-05

純型肺動脈閉鎖(pulmonary atresia with intact ventricular septum:以下PAIVS)の治療方針の決定には右室の大きさ,肺動脈の閉鎖様式に加え,冠動脈が右室内腔と繋がる異常交通(類洞交通)の有無や程度が重要とされる.今回胎児期に類洞交通を評価できたPAIVSの一例を経験したので報告する.超音波検査にて胎児の右室が小さいことを指摘され妊娠23週に紹介となった.初診時の超音波検査にてPAIVSと診断した.また右室心尖部に心筋を貫通する両方向性血流を認め,類洞交通の存在が疑われた.その後冠動脈を起始部から系統的に描出することで,左冠動脈前下行枝からの大きな類洞交通であることを確認した.右室が高度の低形成でかつ大きな類洞交通があることから単心室修復が必要となることが予想された.児は出生後,心臓超音波検査,心臓血管造影にて同様の診断がなされ,単心室修復に至った.胎児超音波で冠動脈を起始部から系統的に観察することで,類洞交通の評価が可能となりそれにより,出生前から治療方針の検討ができ,家族への説明に有用であった.
著者
有内 和代 楊河 宏章 宮本 登志子 井村 光子 西矢 昌子 中西 りか 苛原 稔
出版者
徳島大学医学部
雑誌
JNI (ISSN:13483722)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.99-105, 2005-03

治験は医薬品の開発において必須であり,その過程では逸脱を防ぎ,データの質を確保することが必要である.CRC(clinical research coordinator)の立場から,治験依頼者と医療機関の意思疎通のためのミーティングをより効率的に活用し,治験の品質の向上を行うためのチェックリストを作成した.T大学病院臨床試験管理センターのCRCがこれまでのミーティングにおいて経験した問題点を抽出し,それらを統合してミーティングチェックリストの原案を作成した.原案を平成16年5月~6月に治験が開始された6件において主担当CRCが使用し,必要時には修正,補充を行い,それらを追記内容として直接チェックリストに記載した.治験開始後にこれらのチェックリストを回収し,追記内容等について検討した.詳細な追記は,除外基準や費用の負担(特定療養費の期間に関する規定,入院時の取り扱いなど)などの項目で見られた.画像の取り扱い,同種同効薬と併用禁止薬,条件付き可能薬の一般名表記等においても指摘があった.追加項目として受託事例数が,修正項目として表記方法やレイアウトについての意見があった.これらを総合的に評価し,またあまりに詳細なリストは実用的ではないという意見なども取り入れ,除外基準は疾患名を列記しチェックする形に,また検査,投薬に関しては詳しい内容とするなどの変更を加え,最終的なチェックリストとした.治験における逸脱の原因として,治験依頼者,治験責任医師の間での記載内容の解釈の微妙な不一致の関与の可能性が指摘されている.その克服にはCRCが中心となった品質保証のシステム化が必要であり,今回作成したチェックリストの活用などが有用と考えられる.今後は逸脱防止を目的とし,チェックリストの改良や活用法の検討を重ね対応するとともに,チェックリスト使用の有用性に関する評価を行う予定である.
著者
青野 敏博 東 敬次郎 苛原 稔 池上 博雅 廣田 憲二 三宅 侃 田坂 慶一 堤 博久 寺川 直樹
出版者
徳島大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

TRHやLH-RHは下垂体前葉からプロラクチン(PRL)やLHの分泌を促進する. 一方PRL産生下垂体腫瘍の治療にはドーパミン(DA)の作動薬であるブロモクリプチンが繁用されており, PRL分泌を抑制するほか, 腫瘍を縮少させる効果のあることが知られている. 本研究の目的はPRL, LH分泌時における下垂体細胞内情報伝達機構について明らかにし, DAのPRL分泌抑制作用を検討する実験系としてラット下垂体前葉細胞またはPRL産生下垂体腫瘍であるGH3細胞を用いた. 実験結果をまとめると, (1)マイトトキシンは下垂体細胞内へCa^<2+>の流入を起こし, PRL分泌を促進した. (2)^<32>Pのホスファチジールイノシトール(PI)への取り込みを検討した結果, TRHはPIの代謝回転を促進した. (3)Ca^<2+>によって活性化され, PIを分解するphosphol:pase Cの作用によってジアシルグリセロール(DG), IP3から産生されPRL分泌を促進した. (4)下垂体前葉にはCキナーゼが存在し, PMAによって活性化された. PMAを細胞に添加するとLH, PRLの分泌が促進された. またTRHを作用させると細胞内のCキナーゼは細胞質から膜分画へ移行した. (5)細胞内に取り込まれた標識アラキドン酸はTRHによって放出された. (6)添加されたアラキドン酸はPRL, LHを放出した. (7)アラキドン酸の代謝産物のうちPGは影響を及ぼさなかったが, lypoxygenaseの代謝産物である5-HETEとLeukotrienB4がPRL, LHの分泌を促進した. (8)下垂体前葉細胞における上記の情報伝達系の各ステップはDAによって抑制されたことからDAは全てセカンドメッセンジャーを抑制していることが考えられた. DAの受容体を持たないGH3細胞ではDAによるPRL分泌抑制作用は認められなかった. 以上の結果より, TRH, LH-RHはDG-Cキナーゼ系, Ca^<2+>-アラキドン酸系を細胞内情報伝達系としていることを明らかにし, DAは受容体に結合後, これらの全てのセカンドメッセンジャーを抑制していると考えられる.