著者
関谷 伸一 南部 久男 西岡 満 西脇 薫 栗原 望 田島 木綿子 山田 格
出版者
日本セトロジー研究会
雑誌
日本セトロジー研究 (ISSN:18813445)
巻号頁・発行日
no.21, pp.1-8, 2011
被引用文献数
1 3

カマイルカの頚椎と腕神経叢を、肉眼解剖学的に検討した。7個の頚椎のうち、環椎と軸椎はほぼ完全に融合していたが、第3頚椎以下は分離したままであった。腕神経叢は第3-8頚神経(C3-C8)および第1胸神経(T1)から構成された。これらの7本の神経根が合流しあい、左側で3本、右側で4本の神経幹となった。これらの神経幹が合して、一本の背腹に扁平な帯状の神経束となり、腋窩に達した後、上肢帯筋の筋枝と胸びれの神経を放射状に分岐した。横隔神経と肩甲上神経は、腕神経叢の頭側縁から分岐した。胸筋神経は神経束の腹側面から分岐した。神経叢の背側面からは、肩甲下神経、腋窩神経、橈骨神経、大円筋枝と広背筋枝が分岐した。正中神経と尺骨神経は共同幹をなし、前腕で多数の皮枝を分岐したのち、掌側指神経となった。この共同幹の近位部から、筋皮神経と思われる枝が分岐した。costo-coracoid筋(小胸筋)には胸筋神経と横隔神経からの枝、あるいは腕神経叢から直接分岐した枝が分布していた。頚部の短縮にともなって、腕神経叢を構成する脊髄神経の分節数が増加することがうかがえた。