著者
南部 久男 関 東雄 田島 木綿子 山田 格
出版者
富山市科学博物館
雑誌
富山市科学博物館研究報告 = Bulletin of the Toyama Science Museum (ISSN:1882384X)
巻号頁・発行日
no.40, pp.99-101, 2016-06-20

2015年の富山湾(富山県側)で鯨類の漂着,目撃情報を収集した.2015年はマイルカ科のカマイルカLagenorhynchus obliquidens の漂着6例6個体,目撃3例と,ネズミイルカ科のイシイルカ(イシイルカ型)Phocoenoides dalliの漂着が1例1個体確認された.両種とも富山湾では既知種である.カマイルカの12月の目撃情報は,北上初期に富山湾へ来遊した個体と考えられ,富山湾では最も早い時期のカマイルカの目撃情報であった.イシイルカは富山湾での記録は少なく,今回が3例目であった.
著者
田島 木綿子 和田 敏裕
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2008年から2016年にかけて科博が収集した約1600個体のうち、約150個体を本研究用解析として選別し福島大学にて、当該筋肉サンプルの放射性セシウムと骨内放射性ストロンチウムSr90の蓄積量解析をゲルマニウム半導体検出器を用いて実施した。その場合、コントロールとして九州地区の漂着鯨類を用いた。その結果、風評被害もあるので詳細はまだ控えるが、原発事故直後に茨城県および千葉県で発見された数個体の漂着個体(鯨種も数種)の筋肉から高濃度のセシウムCr-134とCr-137が検出された。この成果は慎重に扱いつつ、解析サンプルを増やし、成果の信憑性を検証する。やはり九州地区の個体からは基準値以下の結果しか得られていない。さらに、実質的な病理学的変化はこれらの個体からはまだ得られていないが、脳を含めた各臓器の所見を引き続き比較・検討する。高濃度セシウムCr-134とCr-137が検出された鯨種の食性結果も別課題で共同研究している北海道大学から得られたため、生物濃縮を検証するための基盤ができた。また、福島原発近くにあたる、茨城県、千葉県、宮城県において、新たな漂着個体を約20件調査することができた。その中には、沿岸性個体と外洋性個体が含まれており、さらには浅瀬で棲息する個体と深海で棲息する個体もいる。海洋の場合は横の広がりだけでなく、縦の広がり(深いー浅い)もこうしたことを考えていく上で重要となる上、継時的変化をみるためには、本年度調査した標本も本研究に追加していく予定とする。さらに、アジア保全医学会(ボルネオ、マレーシア)、日本セトロジー研究会(函館、北海道)、日本野生動物医学会(武蔵野市、東京)、つくみイルカ島シンポジウム(津久見市、大分県)の学会・シンポジウムに参加し、本研究への共同研究の可能性ならびにサンプル提供の依頼を精力的に行った。
著者
関谷 伸一 南部 久男 西岡 満 西脇 薫 栗原 望 田島 木綿子 山田 格
出版者
日本セトロジー研究会
雑誌
日本セトロジー研究 (ISSN:18813445)
巻号頁・発行日
no.21, pp.1-8, 2011
被引用文献数
1 3

カマイルカの頚椎と腕神経叢を、肉眼解剖学的に検討した。7個の頚椎のうち、環椎と軸椎はほぼ完全に融合していたが、第3頚椎以下は分離したままであった。腕神経叢は第3-8頚神経(C3-C8)および第1胸神経(T1)から構成された。これらの7本の神経根が合流しあい、左側で3本、右側で4本の神経幹となった。これらの神経幹が合して、一本の背腹に扁平な帯状の神経束となり、腋窩に達した後、上肢帯筋の筋枝と胸びれの神経を放射状に分岐した。横隔神経と肩甲上神経は、腕神経叢の頭側縁から分岐した。胸筋神経は神経束の腹側面から分岐した。神経叢の背側面からは、肩甲下神経、腋窩神経、橈骨神経、大円筋枝と広背筋枝が分岐した。正中神経と尺骨神経は共同幹をなし、前腕で多数の皮枝を分岐したのち、掌側指神経となった。この共同幹の近位部から、筋皮神経と思われる枝が分岐した。costo-coracoid筋(小胸筋)には胸筋神経と横隔神経からの枝、あるいは腕神経叢から直接分岐した枝が分布していた。頚部の短縮にともなって、腕神経叢を構成する脊髄神経の分節数が増加することがうかがえた。
著者
山田 格 Chou Lien-Siang Chantrapornsyl Supot Adulyanukosol Kanjana Chakravarti Shyamal Kanti 大石 雅之 和田 志郎 Yao Chou-Ju 角田 恒雄 田島 木綿子 新井 上巳 梅谷 綾子 栗原 望
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.1-10, 2006

台湾,タイ,インドの研究施設に保存されている中型ナガスクジラ属鯨類標本22点を調査し,骨格の形態学的特徴から,ミンククジラBalaenotera acutorostrata 4点,カツオクジラB. edeni 7点,ニタリクジラB. brydei 1点,ツノシマクジラB. omurai 10点を確認した.1970年代以来議論は提起されていたもののWada et al.(2003)が記載するまで不明瞭であったツノシマクジラの標本点数が相対的に多かったことは特筆に値する.本研究の結果は,これまで混乱が見られたいわゆる「ニタリクジラ類」の分類学的理解を解きほぐすものである.さらにこの混乱を完全に解決するためには,とくにカツオクジラのホロタイプ標本の分子遺伝学的調査が強く望まれる.