著者
原武 譲二 堀江 昭夫 李 承道 許 萬夏
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.349-354, 1990-09-01
被引用文献数
2

42歳の韓国人男性に見られた肝fibrolamellar carcinomaの1例を報告する. 患者は痛みを伴わない上腹部腫瘤を主訴として来院し, 肝左葉切除術を受けた. 腫瘍は最大径10cm白色硬であり, 非癌部には肝硬変はみられなかった. 組織学的に腫瘍は, 円形核と好酸性で顆粒状の広い多稜形細胞質を有する腫瘍細胞と層状に配列する線維性間質から成っていた. 癌細胞には, 顕著な核小休や, 散在性のpalebody並びに多数の銅結合蛋白顆粒が認められた. オルセイン染色では, 癌部にも非癌部にもHBsAgを証明し得す, 免疫組織化学的染色では, alpha-fetoproteinは陰性であった. 以上の臨床病理学的所見より, 本例は肝fibrolamellarcarcinomaと診断された. fibrolamellar carcinomaの殆どは白人に発生し東洋人の例は極めて稀である. 本症例の報告並びに文献的考察を行いたい.