著者
矢吹 慶 原武 譲二 久岡 正典
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
産業医大誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.387-395, 2019
被引用文献数
2

炭酸ランタンは,末期腎不全(ESRD)の透析患者に発症する高リン血症治療薬として広く使用されている.炭酸ランタンは,消化管内で食物中のリン酸と難溶性化合物を形成するため,消化管粘膜からはほとんど吸収されないとされていた.しかし,近年炭酸ランタン服用患者の胃十二指腸粘膜にランタンが沈着することが報告されている.ランタン沈着は,内視鏡的に様々な大きさや形の白色病変として認識できる.病理学的には,胃十二指腸粘膜内に異物肉芽腫と貪食された沈着物を多数認め,一部の所属リンパ節にも沈着が及ぶ.また,炭酸ランタンの内服量や内服期間が長いほど,胃十二指腸粘膜内のランタン沈着量は多いとされている.詳細なランタン沈着機序は不明な点があるが,胃内のpH,腸上皮化生などの様々な要因が関与すると推察される.本総説では,炭酸ランタン内服患者における胃十二指腸粘膜内のランタン蓄積症について臨床病理学的所見に焦点をあてて解説する.
著者
原武 譲二 堀江 昭夫 李 承道 許 萬夏
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.349-354, 1990-09-01
被引用文献数
2

42歳の韓国人男性に見られた肝fibrolamellar carcinomaの1例を報告する. 患者は痛みを伴わない上腹部腫瘤を主訴として来院し, 肝左葉切除術を受けた. 腫瘍は最大径10cm白色硬であり, 非癌部には肝硬変はみられなかった. 組織学的に腫瘍は, 円形核と好酸性で顆粒状の広い多稜形細胞質を有する腫瘍細胞と層状に配列する線維性間質から成っていた. 癌細胞には, 顕著な核小休や, 散在性のpalebody並びに多数の銅結合蛋白顆粒が認められた. オルセイン染色では, 癌部にも非癌部にもHBsAgを証明し得す, 免疫組織化学的染色では, alpha-fetoproteinは陰性であった. 以上の臨床病理学的所見より, 本例は肝fibrolamellarcarcinomaと診断された. fibrolamellar carcinomaの殆どは白人に発生し東洋人の例は極めて稀である. 本症例の報告並びに文献的考察を行いたい.