著者
諸岡 晴美
出版者
富山大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究では,サ-ポトタイプパンティストッキング(以下,PSとする)の適切な圧力分布に対する具体的な設計指針を得ることを目的として,下肢部の圧縮特性,衣服圧の個人差,下肢各部の衣服圧分布,動作に伴う衣服圧変化,圧快適性と衣服圧との関係,等々について明らかにした。以下に研究成果の概要を示す。1.人体は衣服圧によって変形し,曲率が変化する。そこで,はじめに下肢部とウェスト部の人体表面の圧縮特性を測定し,その特徴と体型との関係を明らかにした。2.次に,できるだけ体型差のある被験者を用い,静立位時のPSによる圧迫の範囲と体型との関係を明らかにした。また,動作に伴う衣服圧変化および強い衣服圧は快適性を低下させることなどを明らかにした。3.PS素材の引張特性から予測される衣服圧は,剛体であるマネキンでは一致度が高い。しかし,圧縮柔らかい人体では計算値と実測値とが必ずしも一致せず,衣服圧と着衣基体の圧縮特性との関わりが示唆された。4.従来より,PSの研究は下肢部に限られており,パンティ部についてみられない。そこで,本研究では、ウェストバンドの圧迫についても検討した。市販ウェストバンドの形態と引張特性を明らかにするとともに,着用時のウェストバンドの伸び変形を測定し,体型および衣服圧との関係を明らかにした。5.PSは,着用中に“ずり"を生じ,皮膚刺激を生む。その刺激の程度は,PSからの圧迫に依存するため,パラフィン法による観測方法を検討した。本研究において,人体の圧縮柔らかさが衣服圧の重要な因子の一つであることが示唆された。そこで今後は,皮膚表面の弾性腺維が減少する中高年齢層の女性をも視野に入れた研究を続行していく計画である。