著者
寺門 淳 樋口 明奈 久保田 祐司 諸澄 孝宜 三橋 彩乃 大鳥 精司
出版者
一般社団法人 日本臨床整形外科学会
雑誌
日本臨床整形外科学会雑誌 (ISSN:18817149)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.51-56, 2022 (Released:2022-07-15)
参考文献数
9

目的:スポーツを行う中高生の腰痛をきたす疾患には腰椎分離症があり,腰椎伸展時に腰痛増強が訴えることが多い.そこで,伸展時腰痛を訴える中高生における腰椎分離症(急性期)の割合を調査することを目的とした.方法:2012年8月から2013年8月までに当院を受診し,伸展時腰痛を訴える中高生の患者は129名であった. 原則として,全員にmagnetic resonance imaging(以下MRI)を施行し,実施可能であった105名を対象とした.MRI横断像short TI inversion recovery(以下STIR)で,関節突起間部の高信号域が認められるものを腰椎分離症(急性期)と診断した.結果:105名中,59名(56.1%)が腰椎分離症(急性期)と診断された.考察:今回の報告が,高い割合で腰椎分離症(急性期)を診断できた理由として,対象患者を伸展時腰痛患者に絞った点,原則全例を対象として横断研究を行った点があげられる.中高生の伸展時腰痛おいては,腰椎分離症をまず念頭におくべきである.結語:整形外科診療所外来を受診した,伸展時腰痛を訴える中高生の患者の約60%が腰椎分離症(急性期)を有していた.
著者
名塚 健史 猪狩 寛城 竹中 良孝 山田 智教 諸澄 孝宜 谷口 剛俊 立谷 守
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CbPI2283-CbPI2283, 2011

【目的】<BR> 我々は,2006年の全国高校野球選手権埼玉県大会(夏季大会)より年間3大会(春・夏・秋)の理学療法士(PT)によるメディカルサポートを開始し5年が経過した。本報告の目的は,5年間のメディカルサポートの対象となった部位や障害・外傷,またそれらへの介入内容を明らかにし,サポート内容を振り返る事で今後の課題を明確にしていく事である。<BR>【方法】<BR> 対象は2006年の夏季大会から2010年の秋季大会までの14大会のうちメディカルサポートを実施した95試合とした。2006年から2008年までは夏季大会はベスト8以降,春・秋季大会はベスト4以降,2009年以降では夏季大会はベスト16以降,春・秋季大会はベスト8以降の試合に対し活動を行った。<BR> メディカルサポートの内容は,試合前はテーピング,試合中は外傷のチェックと応急処置,試合後はクーリングダウンとしてストレッチ指導を実施した。また試合後は必要があればテーピング・アイシング・ストレッチの指導も実施した。なおクーリングダウンは2007年の夏季大会から開始し,原則は全ての高校が対象だが精神面も考慮し敗戦校は希望制としている。<BR>【説明と同意】<BR> 本報告の目的および個人情報保護について埼玉県高等学校野球連盟(高野連)に十分に説明し,同意を得た。<BR>【結果】<BR> 5年間でメディカルサポートに参加したPTはのべ223名であり、1会場平均4.2名であった。デッドボールなどアクシデント後にベンチなどで確認を行った件数は267件、実際にPTが何らかの技術的介入をしたのは178件であった。介入部位としては大腿部が最も多く,続いて肩関節・腰部・下腿・肘関節の順であり,上肢38%,下肢45%,頭部・体幹17%であった。介入の内容としてはアイシングが44%と最も多く,続いてストレッチ35%,テーピング19%,その他2%の順であった。また骨折の疑いや熱中症などで救急搬送が行われたのは3件だった。<BR> 試合中のアクシデントによる外傷と試合以前からの障害の割合は,外傷59%,障害38%,その他3%であった。外傷の受傷機転はデッドボール47%,守備中25%,走塁中15%,自打球3%,その他10%であった。また介入時期の割合は試合前7%,試合中31%,試合後62%であった。<BR>【考察】<BR> 実際に対応を行ったのは野球の競技特性でもある上肢よりも下肢の方が多かった。下肢の障害としては肉離れ,慢性的な足関節捻挫,熱中症に伴う下腿筋けいれんが多かった。また慢性的な障害よりもデッドボールやプレー中のアクシデントによる外傷への対応が多かったのも下肢の介入件数が多かった理由ではないかと考えられる。この結果より,野球というオーバーヘッドスポーツに対しても上肢のみではなく全身への介入が求められ,幅広い知識が必要となる。また外傷が多いことから外傷に対する素早い応急処置の技術の向上が必要であると考える。<BR> 介入時期としては試合後に多くなっており,これはクーリングダウンを開始した07年夏以降著明にみられ,クーリングダウン時に選手とコミュニケーションをとる事で疼痛の訴えを聞きやすい状況にあるのではないかと考える。試合後の介入としてはストレッチが最も多く,選手の訴えに対する的確な評価とそれに対応するストレッチ法の指導が必要になると考える。<BR> 試合以前からの障害が全体の38%を占めるにも関わらず,試合前の介入が全体の7%となった。これは試合前には何らかの障害があっても訴えにくい環境があること,また大会後半からの介入のためトレーナーが帯同している高校が多く,テーピングなどの事前処置はトレーナーが対応しているケースが多いことが考えられる。また大会後に詳細な介入結果の提示が出来ていなかったため,メディカルサポートで何ができるのか指導者側にうまく把握してもらっていない状況があると考える。早急にこの結果の提示と,それをもとに高野連・指導者と勉強会を行い,PTがどのように考えどのような介入を行っているのかを伝える必要があると考える。<BR> また参加人数は1日原則4名体制だが,シフトの関係上2名でサポートを行い,試合後のクーリングダウンで投手・野手を分けて行えなかった日程があった。これはアナウンスの時期が遅い,継続して参加するスタッフが少ないなどの問題点が上がった。今後は現場経験の少ない理学療法士でも参加しやすいよう,現場で必要な知識や技術を身につけてもらえるように年数回,段階的に勉強会を行うことを計画している。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 5年間の埼玉県における高校野球のメディカルサポートの内容を整理し,今後の課題を明らかにした。これらをもとに,メディカルサポートに関わる理学療法士の育成のための勉強会や実技講習会,また選手や指導者にフィードバックすることで障害予防へつながる有益な資料となると考える。