著者
谷元 勇太 原 正文 緒方 隆裕 永松 邦夫 竹原 大地
出版者
一般社団法人 日本臨床整形外科学会
雑誌
日本臨床整形外科学会雑誌 (ISSN:18817149)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.45-49, 2022 (Released:2022-07-15)
参考文献数
9

目的:プロ野球投手を対象にメディカルチェックを実施し,疼痛再現性評価での疼痛に関与する理学所見について検討した.対象:2004年から2016年の13年間のシーズン後に,メディカルチェックを実施した,投球時痛を訴えていないプロ野球投手191名を対象とした.方法:調査項目として,当院で利用している野球肩理学所見11項目を評価した.疼痛再現性評価のImpingement testまたはHyper external rotation test(以下HERT)にて,疼痛の再現を認めたものを疼痛群,疼痛の再現を認めなかったものを非疼痛群とし,各項目の異常率を2群間で比較,検討した.結果:疼痛群の異常率が非疼痛群と比較し,有意に高値を示した項目は,関節不安定性評価(以下LOOSE),肩甲帯機能評価のElbow extension test (以下EET),Elbow push test(以下EPT),腱板機能評価の下垂位外旋筋力(以下ER),初期外転筋力(以下SSP)であった.また,肩関節可動域評価のCombined abduction test(以下CAT),Horizontal flexion test(以下HFT)の異常率は,両群ともに高値を示し有意差は示さなかった.考察:プロ野球投手において,肩関節可動域制限は疼痛再現性評価での疼痛の有無に関わらず高頻度で認め,疼痛再現所見は肩関節可動域制限を基盤に,関節不安定性,肩甲帯機能低下,腱板機能低下といった所見が増加することで発生すると考えられた.
著者
寺門 淳 樋口 明奈 久保田 祐司 諸澄 孝宜 三橋 彩乃 大鳥 精司
出版者
一般社団法人 日本臨床整形外科学会
雑誌
日本臨床整形外科学会雑誌 (ISSN:18817149)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.51-56, 2022 (Released:2022-07-15)
参考文献数
9

目的:スポーツを行う中高生の腰痛をきたす疾患には腰椎分離症があり,腰椎伸展時に腰痛増強が訴えることが多い.そこで,伸展時腰痛を訴える中高生における腰椎分離症(急性期)の割合を調査することを目的とした.方法:2012年8月から2013年8月までに当院を受診し,伸展時腰痛を訴える中高生の患者は129名であった. 原則として,全員にmagnetic resonance imaging(以下MRI)を施行し,実施可能であった105名を対象とした.MRI横断像short TI inversion recovery(以下STIR)で,関節突起間部の高信号域が認められるものを腰椎分離症(急性期)と診断した.結果:105名中,59名(56.1%)が腰椎分離症(急性期)と診断された.考察:今回の報告が,高い割合で腰椎分離症(急性期)を診断できた理由として,対象患者を伸展時腰痛患者に絞った点,原則全例を対象として横断研究を行った点があげられる.中高生の伸展時腰痛おいては,腰椎分離症をまず念頭におくべきである.結語:整形外科診療所外来を受診した,伸展時腰痛を訴える中高生の患者の約60%が腰椎分離症(急性期)を有していた.
著者
相良 優太 乾 泰大 小川 孝 西川 仁史 池田 均
出版者
一般社団法人 日本臨床整形外科学会
雑誌
日本臨床整形外科学会雑誌 (ISSN:18817149)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.39-47, 2017

<p>目的:投球障害肩にみられる投球側の肩甲骨位置異常と,肩関節90°外転位での内旋,外旋(第2肢位すなわち2nd planeでの内旋,外旋;以下2nd内旋,2nd外旋)可動域の変化との関連性について検討した.</p><p>方法:対象は,投球障害肩を加療した37人の小学生と中学生である.理学療法開始前には,全例に肩甲骨位置異常が認められた.肩甲骨の位置が左右対称となるように理学療法を行い,理学療法開始前と肩甲骨の位置が左右対称となった時点での2nd内旋,2nd外旋および全回旋可動域を投球側と非投球側とで比較した.</p><p>結果:理学療法開始前には,投球側の2nd内旋可動域の有意な制限と2nd外旋可動域の有意な拡大が認められた.全回旋可動域には有意差はなかった.一方,肩甲骨の位置が左右対称となった時点では,すべての項目で投球側と非投球側との間の有意差はなかった.</p><p>考察:骨性の要因や軟部組織性の要因以外に肩甲骨位置異常が,2nd内旋可動域と2nd外旋可動域の変化に関連していると考える.</p><p>結論:肩甲骨位置異常は,2nd内旋可動域の制限と2nd外旋可動域の拡大を引き起こす一因である.</p>