著者
大西 聖子 谷内 佳代 田中 英夫
出版者
Japanese Society of Public Health
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.246-253, 2007

<b>目的</b> 喫煙歴のある入院患者に対して,郵送による退院後の喫煙状況調査を行った。すぐに返信する者と督促によって返信する者とで,退院後の断面禁煙率(以下,禁煙率という)の違いや喫煙行動関連要因の違いを調べた。これらの結果から,患者への郵送による喫煙状況調査の問題点を検討する。<br/><b>方法</b> がん(成人病)専門診療施設に入院した喫煙患者(入院当日の喫煙状況が喫煙中,あるいは禁煙後31日以内であった者)556人に,入院から12か月後の時点の喫煙状況を郵送で尋ねた(初回調査)。返信のない者には最多で 2 回の督促状を,調査用紙とともに郵送した(2 回目調査,3 回目調査)。計 3 回の喫煙状況調査の返信行動別に各調査回の禁煙率を求め,比較した。また,返信行動の違いと入院時点の喫煙行動に関連する属性との関係を多重ロジスティック回帰分析で調べた。<br/><b>結果</b> 全対象者に占める回答者の割合は,初回調査から順に53%,20%,4%であった。各調査回において返信があった者での禁煙率は,初回調査63%(184/294),2 回目調査29%(32/112),3 回目調査33%(7/21)と,2 回目,3 回目調査は,初回調査に比べて有意に禁煙者の占める割合が低かった(<i>P</i><0.01)。<br/> 対象者の属性を初回調査の返信者と 2 回または 3 回目調査の返信者とで比較すると,後者は前者に比べて女性の割合が高く(オッズ比2.1,95%信頼区間(CI):1.20-3.81),また入院当日に喫煙中であった者の割合が高かった(同2.1,95%CI:1.28-3.46)。つぎに,初回調査の返信者と最終的な未返信者との属性を比較すると,後者は前者に比べて女性(同2.4,95%CI:1.38-4.29),年齢が59歳以下の者(同1.9,95%CI:1.15-3.28),入院当日に喫煙していた者(同2.9,95%CI:1.70-4.96)の割合が高かった。<br/><b>結論</b> 退院後の郵送による喫煙状況調査において,督促によって返信した者では禁煙者の割合が低く,また,督促によって返信した者や未返信者では,初回調査で返信した者に比べて禁煙しにくい属性を有する者の割合が有意に高かった。以上の成績から,退院後の郵送による喫煙状況調査においては複数回の督促等によって未返信者の割合を最小限にすることが正確な喫煙状況の把握のために必要であると考えられる。