著者
覚道 健一 谷口 恵美子 若狭 朋子 山下 弘幸
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.99-103, 2014 (Released:2014-08-07)
参考文献数
20

日本甲状腺学会は,甲状腺結節取扱い診療ガイドライン2013を出版した。甲状腺結節の診療では細胞診が重要な役割を持つ。しかし細胞診で30%以上の症例は,良性・悪性の結論が出ない「検体不適」,「鑑別困難」,「悪性疑い」に診断される。甲状腺結節取扱い診療ガイドラインでは,これらを実地臨床の場でどのように取り扱うかの解決策を示した。細胞診で鑑別困難に分類された症例は,画像などの臨床検査と合わせて手術対象例を絞り込む。細胞診でも,鑑別困難をさらにリスク分類することを推奨した。まず鑑別困難を「濾胞性腫瘍」と「その他(濾胞性腫瘍以外)」に分類する。濾胞性腫瘍群は,悪性の可能性の高い(favor malignant)と良性の可能性が高い(favor benign)に分類することを推奨した。すなわち鑑別困難群の大半(70~90%)を占める良性結節患者に無用な診断的葉切除術を適応しないことを求めている。欧米では全例に診断的葉切除術が薦められるのに対し,日本では「濾胞性腫瘍」患者でも,他の臨床検査項目が良性の患者は経過観察も選択肢となる。濾胞性腫瘍の亜分類を省略した診断様式を選択すると,国際的診断様式と読み替え可能な6カテゴリー分類に変換できる。平易な診断用語を用い,悪性の確率,甲状腺結節の性状が類推しやすい言葉を用い利用者の利便性を図った。
著者
河野 伊智郎 谷口 恵美子 覚道 健一 宮内 昭 隈 寛二
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.116-120, 1995 (Released:2011-11-08)
参考文献数
19

甲状腺腫瘍領域で近年, 穿刺吸引細胞診が広く用いられてきている. 従来, 甲状腺腫瘍の良性悪性の判定は困難であったが, 細胞診の導入により術前診断可能な症例が増え, その診断能も格段に向上してきた. 特に, 乳頭癌と髄様癌は, 細胞診でほぼ確診に近い診断を行うことが可能である. 本稿では, 甲状腺髄様癌に焦点を置き, その組織学的特色と, 細胞診における鑑別診断について記載した. 甲状腺髄様癌の特色は, 多稜型の粗結合性細胞が, 乳頭構造や濾胞構造をとらずに出現することであり, 壊死は認めず, ときにアミロイドを混じることがある. 紡錘形亜型の髄様癌では, 間葉系腫瘍様の紡錘形細胞が, 上皮配列をとらずに出現することがある. 腫瘍細胞は, 一般的に細胞質が広く, N/C比は小さく, 免疫組織学的に細胞質内のカルシトニンを証明すれば確定診断となる. 細胞の極性がないため, 核の位置はまちまちで, クロマチンの増量や核異型の程度も, 比較的乏しいものから, かなり強いものまで多彩である. しかし一般的には, 乳頭癌に比べると異型度は高度であり, クロマチンの粗大凝集を特色とする. また稀に核内封入体も認めることがあるので留意が必要となることがある.
著者
鍵弥 朋子 中村 美砂 森 一郎 谷口 恵美子 西上 圭子 尾崎 敬 覚道 健一
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.183-188, 2008 (Released:2008-10-30)
参考文献数
7

目的: 細胞診用に採取された尿を用いての遺伝子解析が可能な保存温度条件を明らかにするため, 尿の保存温度と時間経過による尿中細胞 DNA, RNA の変性・減少と細胞形態の変化を観察し検討した.方法: 自然尿を採取時から 15 日後まで 3 種の温度条件 (−20℃, 4℃, 25℃) で保存し, DNA, RNA を抽出した. PCR 法で p53 を検出可能であったものを DNA が保存されたと判定した. RT-PCR 法でβactin を検出可能であったものを RNA が保存されたと判定した. DNA, RNA 検出の再現性の確認のため, 9 例の尿を用いて検討した. 細胞形態は 2 回遠沈法で固定塗抹, パパニコロウ染色を行い観察. 顕微鏡下で細胞数を計測した.成績: 採尿直後に処理すれば DNA, RNA とも PCR 可能な状態で抽出できた. 尿を−20℃, 4℃で保存すれば DNA は 15 日後, RNA は 11 日後に抽出したものから目的配列を PCR 法で増幅可能であった. 抽出効率は男女間で差はみられなかった. 形態的検討では, 保存期間が長くなるにつれ塗抹細胞量が減少した. 細胞形態保存は 4℃保存が最も適していた.結論: 尿の至適保存温度は, 細胞形態保存は 4℃, 核酸保存は−20℃, 4℃であり, DNA は 15 日後, RNA は 11 日後の尿から抽出可能であった.