著者
茅野 久美 谷口 珠実
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.35-44, 2020 (Released:2021-08-24)
参考文献数
21

高齢者虐待防止のためのストレス対策への示唆を得るため,介護老人保健施設の看護職および介護職のエイジズム,ストレスと感情労働の関連を明らかにすることを目的とし,無記名自記式質問紙調査を行った.測定尺度は,日本語版Fraboniエイジズム尺度(FSA)短縮版,陰性感情経験頻度測定尺度,感情労働尺度を用い,階層的重回帰分析を行った.その結果,感情労働の「ネガティブな感情表出」に対して,「(高齢者の)わがままや過度な訴えに対する陰性感情」というストレスが強い関連(β=.515,p<.01)を示し,エイジズムの関連は示されなかった.一方,ストレスに対してはエイジズムの「回避」が最も強い関連(β=.373,p<.01)を示した.以上の結果より高齢者に対して怒りを表出する傾向の「ネガティブな感情表出」を軽減するために,いらだち等の陰性感情を調整する能力を高める重要性が示された.また,「回避」を軽減することで,ストレスの発生防止につながる可能性が示唆された.