著者
橋本 智江 川島 和代
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.115-122, 2018-08-01

<p> 利用者の重度化が進む介護保険施設において,入浴ケアは高温・多湿の環境下で行われる,介助者の負担が大きいケアのひとつである.本研究では,介護保険施設における入浴ケア体制の実態を明らかにし,介助者の負担に影響する課題を検討することを目的とした.方法は,介護保険施設計342施設に対し,質問紙を郵送し,入浴ケア体制に関する内容について,ケア管理者に回答を依頼した.その結果,156施設から回答が得られた(回収率45.6%).介護老人福祉施設では,1人用の浴槽を設置している施設が多く,マンツーマンでのケアを行っている施設が介護老人保健施設,介護療養型医療施設に比べて多い傾向がみられた.また,介助者が1勤務帯に入浴ケアに携わる時間は,200分以下が半数以上を占めていたが,300分以上の施設もみられ,3施設間で違いはみられなかった.これらのことから,介護保険施設における入浴ケアは,利用者の重度化に伴い長時間を要しており,介助者の負担の一因となっていることが考えられた.</p>
著者
藤巻 尚美 流石 ゆり子 牛田 貴子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.80-86, 2007-11-01
被引用文献数
1

介護老人福祉施設を"終の住処"としている後期高齢者の現在の生活に対する思いを明らかにすることを目的とし,意思疎通が可能で入所後半年以上経過している14名にインタビューを行った.得られたデータをKJ法で分析し,以下の結果を得た.(1)家族に対し【故郷で家族と一緒に暮らしたい】が【家族のお荷物にはなりたくない】という,自己の欲求と家族への気遣いの相反する思いを抱いており,この思いのギャップを埋めるように【私は私,家族は家族】という思いを抱いていた.(2)施設生活に対し【施設生活ならではの安心感がある】が【受け身でしかない施設の生活は意に沿わない】と,相反する思いを抱いていた.(3)現在の生活に対し【すべてをのみこんで生活している】が【やっぱり寂しい】という思いを抱きながら生活していた.高齢者はすべてを納得しているように見えても,本心を抑えて寂しさとともに生活しており,この思いを念頭に置いたその人らしい現実の意味づけへの関わりの重要性が示唆された.
著者
松本 啓子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.63-71, 2007-11-01

本研究では,在宅における認知症高齢者の家族介護者の医療に関するニーズを明らかにするために,在宅認知症高齢者の家族介護者の医療ニーズに着目し,その因子構造を構築し医療ニーズ測定尺度を開発すると同時に,その尺度の信頼性と妥当怪の検討を行った.解析の結果,「日常生活関連ニーズ」「医学的知識のもとの観察ニーズ」「介護者の安心感ニーズ」を一次因子, 「医療ニーズ」を二次因子とする二次因子モデルのデータ-の適合度はx^2 (df)=1.796,GFIが0.959,AGFIが0.937,CFIが0.975,RMSEAが0.048であった.パス係数はいずれも統計学的に有意な水準であった.また,内部一貫性を示すクロンバックのα信頼係数は,0.894であった.3因子12項目からなる在宅認知症高齢者の家族介護者の医療ニーズ尺度を構築でき,構成概念妥当性ならびに信頼性を備えていることを確認した.
著者
谷口 好美 亀井 智子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.110-118, 2002-11-01
被引用文献数
1

本研究の目的は,医療の場に勤務する看護者の高齢者観および不愉快体験を記述することである.病院,介護老人保健施設の看護者365名を対象に,構成的質問紙を用いて高齢者への肯定的・否定的傾向,および自由記載にて高齢者看護における不愉快体験とその内容を収集した.その結果,以下のことが明らかになった.1.老年期の開始は70歳前後,人生で最悪だと思う年代は60〜80代以上が最も多かった.2.約6割は高齢者を看護することに対して好意的であり,「高齢者はめったに怒らない」「経験があり賢明」等と捉えていた.一方,「慢性疾患」「新しいことを学ぶのは大変」「長期ケア施設に入所・入院している」等の意見に対しては否定的な傾向がみられた.3.看護上で不愉快な体験があった者は44.4%で,その内容は「暴言・暴力」「頑固・自己中心的・他者の言うことを聞こうとしない」等の10カテゴリーに分類され,看護者の高齢者観,高齢者に対する態度に影響している可能性があることが示唆された.
著者
山田 紀代美 鈴木 みずえ 佐藤 和佳子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.165-172, 2000-11-01
参考文献数
32
被引用文献数
4

本研究は, 6年間の追跡調査に基づき,在宅の要介護高齢者の介護者の主観的疲労感と生活満足感の変化およびそれらに関連すると考えられる要因を明らかにすることを目的に行った.調査対象者は,静岡市の特別養護老人ホームの在宅サービスの利用介護者で初回調査に参加した82人のうち,追跡調査に回答した53人である.疲労感については蓄積的疲労徴侯調査票を,生活満足感は介護者の生活に対する主観的な満足感を求めた.その結果は以下のとおりであった.1.在宅での介護継続の有無に関して,介護継続者は14人,介護を終了していた元介護者は39人であった.2.介護継続者は,蓄積的疲労徴候調査票の特性の中で,抑うつ感,不安感,一般的疲労感,身体不調は有意(p<0.05)に疲労感が低下していた.しかし,慢性疲労,イライラの状態,気力の減退では変化がみられなかった.元介護者については,蓄積的疲労徴候調査票の7特性のうち,気力の減退を除く6特性で著明な改善が認められた(p<0.01).3.生活満足感については,介護継続者および元介護者のどちらも満足感を感じている者が多く,6年間での変化はみられなかった.4.介護継続者においては,趣味をもつものが,元介護者よりも有意(p<0.05)に多かった.
著者
水野 敏子 高崎 絹子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.79-88, 1998-11-15

子供の近くに転入し,現在,公的サービスを受けているいわゆる「呼び寄せ老人」とその介護者98組に面接し,生活実態調査を行うとともに,介護者の呼び寄せに対する認識に影響する要因を分析した.その結果「呼び寄せ老人」は近県移動が主であり,痴呆が中等以上になってからの移動が多く,移動能力もつかまり歩行以下になってからの移動が多かった.呼び寄せに対する介護者の認識,すなわち呼び寄せて良かったか否かという認識に影響する要因を推測するために,数量化II類の分析を行った.その結果,「良かった」とする因子は,呼び寄せ前準備期間が3ヶ月以上あり,人間関係がよく,呼び寄せ前の移動能力に介助が必要で,痴呆症状よりも寝たきりへの介助が必要な人であった.今回の結果から,呼び寄せ老人への直接的支援よりも,介護者への支援が優先されるべきであることが示唆された.
著者
形上 五月 陶山 啓子 小岡 亜希子 藤井 晶子
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.13-20, 2011
参考文献数
15

本研究の目的は,尿意の訴えがなく失禁している介護老人保健施設入所者の中で膀胱機能が維持されている高齢者を対象として,尿意を定期的に確認し対象者の尿意の訴えに基づいたトイレ誘導を実施し,その効果を明らかにすることである.対象者は9名であった.実施期間は4週間とし,午前8時の排泄後から午後4時までの8時間に排尿援助を行った.事前に把握した対象者それぞれの排尿間隔を参考に排尿誘導時間を設定し,誘導時間には必ず対象者に尿意を問いかけた.実施前7日間,実施後7日間の失禁率と尿意を訴えた回数の変化で効果を評価した.尿失禁率は実施前後において有意に低下,確実に尿意を訴えた回数は有意に増加した.対象者のうち2名は,自発的に尿意を訴えることができるようになり,失禁は消失した.また,5名の対象者は,援助者の尿意の確認に対して尿意の有無が伝えられるようになり,失禁は減少した.以上のことより,尿意を訴えない施設高齢者であっても援助者が尿意を確認することで,自発的な尿意の表出が促進され,尿意に基づいた排尿援助を実施できる可能性が示唆された.
著者
長谷川 真澄 粟生田 友子 鳥谷 めぐみ 木島 輝美 菅原 峰子 綿貫 成明
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.32-41, 2017

<p> 本研究の目的は,急性期病院のせん妄対策における多職種チームの構築プロセスを明らかにすることである.関東および関西地区の一般病院のせん妄ケアチーム8チームを対象に,チームメンバーへの半構造化インタビューを行い,質的帰納的に分析した.</p><p> 分析の結果,55サブカテゴリー,17カテゴリーが抽出され,4つの局面に分類された.せん妄ケアチームの構築プロセスは,せん妄対策の【チームの立ち上げ】を契機に【チームの組織化】と【チーム活動の推進】が進み,波紋が広がるように組織内にチーム活動が浸透し,【チーム活動のアウトカム】が生じていた.このプロセスには,臨床のせん妄対策のニーズと,そのニーズを認識し行動する複数の人材が存在し,トップと交渉し支援を取りつけ,チームの内部と外部の組織化を進め,チーム活動のコスト回収方法を検討することが含まれた.また,せん妄ケアに関するスタッフ教育とケアプロセスのシステム化が組織全体のせん妄ケアスキルの向上に寄与し,チーム回診がスタッフレベルでの連携・協働の促進につながることが示唆された.</p>
著者
出貝 裕子 勝野 とわ子
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.5-12, 2007-11-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
24

本研究の目的は,介護老人保健施設入居中の認知症高齢者のagitationと周囲の騒音レベルの実態およびagitationに関連する要因を明らかにすることであった.ストレス刺激閾値漸減モデルに基づき,18名の認知症高齢者を対象にその周囲で騒音レベルを測定し,CMAI(Cohen-Mansfield Agitation Inventory)日本語版を用い,agitationの有無を2日間観察した.ロジスティック回帰分析の結果,騒音レベルが高いこと,時間帯では午前と比較して午後(特に15:00〜17:59)であること,HDS-Rが7点以下であること,重度難聴に比較し軽度難聴であることと, agitationが観察されたことに有意な関連があった.したがって,agitationに対し時間帯や騒音レベルを考慮した環境調整からのアプローチが有効である可能性が示唆された.
著者
菊池 奈々子 山田 律子
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.51-60, 2017 (Released:2018-08-01)
参考文献数
19

本研究の目的は,高齢者の熱傷の特徴と「熱傷の重症度」への影響要因について明らかにすることである.熱傷で受診した高齢者130人の診療録・看護記録を遡及的実態調査し,前期高齢者81人と後期高齢者49人で比較分析した結果,前期高齢者では「末梢神経障害」,後期高齢者では「認知症」「眼疾患」が有意に多かった(p<0.05).高齢者の熱傷の特徴として,受傷原因は「高温液体」が両者ともに3割と最多であったが,前期高齢者に比べ後期高齢者では受傷部位が「背部」に多く,熱傷面積が13.5(1.0~45.0)%と広範囲で,重症熱傷者が22.4%と多かった(p<0.05).「熱傷の重症度」を従属変数とした重回帰分析の結果,前期高齢者では「火炎」「胸部」「右下腿」「顔面」「発見者の存在」(決定係数R2=0.593)が,後期高齢者では「背部」と「火炎」(R2=0.649)が影響要因として挙げられた.今後は,日常生活上の注意喚起のみならず,感覚機能の低下や認知症に配慮した環境の工夫といった熱傷予防の必要性が示唆された.
著者
石川 みち子 小倉 美沙子 吉田 千鶴子 木内 千晶 畠山 怜子
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.69-74, 2005
参考文献数
10
被引用文献数
1

わが国は,類をみない速さで男女とも世界の長寿国となった.寿命の延長に伴い,100歳以上の高齢者(百寿者)も増え続けている.増加し続ける百寿者であるが,I県における百寿者の生活実態は把握されていない現状にある.そこで,百寿者の生活実態を明らかにすることを目的に,百寿者名簿で氏名と在住する市町村名が公表されている百寿者303名を対象として,質問紙調査を行った.データ分析は,質問紙に回答した時点で満100歳を超える180名を対象とした.基本属性,職業の有無,健康状態,日常生活動作および認知機能,食事摂取内容,介護認定状況,利用しているサービス,性格傾向,長生きの秘訣について質問紙調査を行った.今回は,日常生活動作および認知機能と,健康状態,居住形態,退職後の趣味・社会活動の関連性について検討した.居住形態については,自宅で生活している人のほうが有意に日常生活自立群が多く,自宅で生活している人のほうが有意に認知機能保持群が多かった.本研究の調査では, I県における百寿者の生活実態が明らかとなり,健やかな長寿を達成する要因を検討するための基礎資料となった.
著者
阿川 慶子 原 祥子 小野 光美 沖中 由美
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.46-54, 2012-11-30

本研究は,高齢慢性心不全患者が日常生活において心不全に伴う身体変化をどのように自覚しているのかを明らかにすることを目的とした.対象は,慢性心不全と診断され入院または外来通院している高齢者11人として半構成的面接を行いデータ収集し,質的記述的に分析した.高齢患者は,【変化速度の緩急】【体の制御感の喪失】【自己調整できる苦しさ】【自分のありたい姿との調和】【忘れられない極限の体験からの予見】【独特な身体感覚】【客観視された情報による気づき】によって自己の身体変化を自覚していた.患者は,自分の身体を知ろうと模索し感じとった身体変化を特有な表現で他者に伝えることや,自己調整できる苦しさであるという自覚によって対処が遅れる可能性を抱えていた.患者の感じている身体変化を看護師が理解するためには,患者が感じたままに表現できる場を設け,患者の身体に対する期待や理想,日常生活のなかで感じる不都合さ,忘れられない極限の体験を手がかりとして思いを聞くことが有効である.
著者
古田 加代子 伊藤 康児 流石 ゆり子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.5-16, 2005-11-01
被引用文献数
3

本研究では,移動能力があり,身体の障害も軽いにもかかわらず閉じこもっている高齢者には,心理的要因が大きく作用しているとの観点から,その心理的要因の構造を明らかにすることを目的とした.なお日常的な外出頻度が過1回以下の者を「閉じこもり」と定義した.A県O村に居住する65歳以上の高齢者を対象に,質問紙調査を行い,252名(男性109名,女性143名,有効回答率は80.5%)の回答から以下の結果を得た.1.閉じこもりの有無と関連のある心理的要因は「生活創造志向」「人生達成充足感」「穏やかな高揚感」「外出志向」の4項目であった.閉じこもり群は非閉じこもり群に比べ,この4因子が有意に低かった.2.「生活創造志向」の低さを予測する要因は,年齢が高い,1km歩行ができない,日常の時間が決まっていない,手段的サポートがない,の4つであった.3.「人生達成充足感」の低さを予測する要因は,年齢が低い,現在の体調が悪い,外出の不安がある,手段的サポートがない,の4つであった.4.「穏やかな高揚感」の低さを予測する要因は,現在の体調が悪いことであった.5.「外出志向」の低さを予測する要因は,性別が男性であることと,何らかの身体的不自由感があることであった.閉じこもり予防を目指した活動では,こうした心理的特徴をふまえた関わりが必要となる.
著者
細川 淳子 佐藤 弘美 高道 香織 天津 栄子 金川 克子 橋本 智江 元尾 サチ
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.81-88, 2004-03-15
被引用文献数
2

平成14年度春のグループ回想法プログラムにおけるビデオ撮影によって得られた表情の画像と,その表情時の回想内容を重ね合わせながら,一事例(A氏,88歳男性)にみられる特徴的な表情を捉える試みを行った.さらに,その表情が日常生活でもみられるかを観察した.結果,5回の回想法でみられたA氏の特徴的な表情として【難しい表情】【見定める表情】【笑いの表情(社交的な微笑み・照れ笑い・口を大きく開けた笑い)】【困った表情】【おどけた表情】の5つが抽出された.また,3日間の日常生活における対人交流場面との比較では,困った表情やおどけた表情は観察されず,難しい表情と見定める表情は各々1場面観察された.笑いの表情では,社交的な微笑みは1場面,照れ笑いは数回,口を大きく開けた笑いは,アクティビティケア時に観察された.日常生活では全般的に表情が変わらない時間が長かった.表現された表情から回想法での刺激が対象にとってどんな意味をもったのかを吟味することで回想法プログラムの評価を行い,そこで引き出された力を日常生活の中で活かしていくケアが重要だと考える.
著者
秋月 仁美 坂本 奈穂 西 あずさ 榊 友希 出戸 亜沙子 永田 真由美 吉田 有希 笹川 寿之 平松 知子 正源寺 美穂
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.79-85, 2006-11-01
被引用文献数
1

本研究では健康度自己評価に関連する因子を明らかにするため,A県に居住する健康な高齢者897名を対象に質問紙調査を行った(男性214名,女性683名,有効回答率83.7%).多重ロジスティック回帰分析の結果,健康度自己評価と病気・障害の有無のそれぞれに関連する因子として以下の結果を得た.1.健康度自己評価が高いことに関連する因子として,病気や障害がない,日常動作に困難を感じない,痛みによる生活への影響がない,自分は若いと感じている,生活に満足している,付き合いがある,趣味がある,熟眠感がある,毎日運動を行っていることがあげられた.2.病気や障害がないことに関連する因子として,70〜74歳あるいは85歳以上,女性,服薬をしていない,日常動作に困難を感じない,心配や不安がない,食欲があることがあげられた.これらの結果から地域の健康な高齢者の健康を維持するためには,身体的健康だけではなく,心理的,社会的,そして日常生活に伴って感じられる自分自身に対する満足感や,自分自身の意志によって行われる保健行動も重要である可能性が示唆された.
著者
粟生田 友子 長谷川 真澄 太田 喜久子 南川 雅子 橋爪 淳子 山田 恵子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.21-31, 2007-11-01
被引用文献数
5

本研究の目的は,(1)せん妄発生因子を患者へのケア実践過程にしたがって構造化し,(2)その発生因子とせん妄発症との関連を明らかにすることである.せん妄発生因子は,【背景・準備因子】【身体・治療因子】【患者因子】【周辺因子】の4領域102項目と,薬剤104種類について,せん妄発症との関連を検証した.研究の場は一般病院1施設の,産科,小児科,脳神経外科病棟を除く7病棟であり,2005年1〜3月の3か月間に,基点となる週から2週間ごとに等間隔時系列データ収集法を用いて,6クールのデータ収集を行い,75歳以上の入院患者の全数を調査した.その結果,対象はのベ461名得られ,DRS-Nによってせん妄発症の有無を判定したところ,せん妄発生群96名(DRS-N平均得点16.16点),非せん妄発生群365名(2.44点)となった(発症率20.8%,t=37.687,p=.000).【背景・準備因子】では,「年齢」「入院ルート」「認知症または認知障害」「脳血管障害」「せん妄の既往」の5項目で両群に有意差が認められ,【身体因子・治療因子】で,身体因子の「せん妄を起こしやすい薬物の投与数」「高血圧の既往」「脳血管疾患の既往」「消化器疾患の既往」「感染症徴候(CRP,発熱)」「低血糖/高血糖」「肝機能障害(LDH)」の7項目,治療因子の「緊急手術」「緊急入院」の2項目に有意な差があった.【患者因子】では,日常生活変化の「陸眠障害(夜間不眠,昼夜逆転)」「排尿トラブル(尿失禁,おむつ使用)」「排便トラブル(下痢)」「脱水徴候」「低酸素血症(O_2 sat)」「ライン本数」「可動制限(生活自由度)」「視覚障害(眼鏡使用)」の8項目,【周辺因子】では,物理的環境の「部屋移動」,物理的環境への認識/反応の「日にちの確認(カレンダーで確認)」「時間の確認(時計で確認)」「点滴瓶やルートが気になる」の4項目に有意差を認めた.今回抽出できた因子は,せん妄の発症リスクの判断指標となりうるもの,あるいは看護介入によって発症を予防できる可能性をもつものであり,看護職が日々のケアの中で介入可能なものに対して介入方法とその効果を明確にしていくことが今後必要であると考えられた.
著者
相場 健一 小泉 美佐子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.75-84, 2011-11-30

本研究の目的は,重度認知症高齢者に経皮内視鏡的胃瘻造設術(胃瘻)による経管栄養法を選択した家族の代理意思決定に伴う心理的プロセスを明らかにし,その課題と看護支援への示唆を得ることである.研究方法は,胃瘻を選択した認知症高齢者の家族13人に対して半構成的面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.そのプロセスは《摂食困難への悩み》《命をつなぐための選択と葛藤による絞り込み》《最後までみる覚悟をしての決断》《胃瘻のある生活への不安と期待》《介護生活に対する自信と不安》《満足するものの自問自答を繰り返す》の6つのカテゴリーで構成された.家族は医師への信頼と患者の命をつなぎたい思いから胃瘻を決断していた.しかし,そこには迷い,葛藤,不安,答えの出ない代理意思決定への悩みが存在した.看護師は家族に対して高齢者にとっての胃瘻の意味を考えるように促し,家族が自らの決定に意味を見いだせるようにかかわる必要性が示唆された.
著者
原 祥子 沼本 教子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.35-43, 2004-03-15
参考文献数
27
被引用文献数
6

本研究の目的は,老いを生きる人が自己のライフストーリーをどのように語るのかを記述し,過去の体験と残された人生にどのように意味づけをしていくのかを明らかにすることである.対象は介護老人保健施設を利用している79歳の女性で,3回の非構造化面接を通じてデータ収集し,得られたデータは量的・質的な内容分析を行った.語られたライフストーリーについては,そのアウトラインを提示し,要約を記述した.そのライフストーリーは,他者との関係性のストーリーを語るという女性の発達の様相を呈し,残された人生に対しても,人とのつながりを通して自己の存在に意味づけをしていくことが示されていた.ライフストーリーの語られ方に関する分析結果では,過去の各人生時期の語りにかけられた時間には密度の濃淡があることや,ライフストーリーにおける空自の時間の存在が確認され,聞き手が空白の時間をも共有しながら聞くことの重要性が示唆された.
著者
六角 僚子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.114-122, 2001-11-01
被引用文献数
3

「アクティビティケア」(以下,AC)という視点から痴呆性高齢者のケア実践を1年間試み,その有効性を見てきた結果,以下のことが確認された.1)高齢者のアセスメントを重視したACの提供の結果,AC時のみならず日常生活全般での社会的交流能力やIADLを引き出し,日常生活自立度が改善された.2)そのことが,グループACにおいても対象者を取り囲む他の高齢者にもプラスの影響を与え,それぞれの社会的交流能力が引き出された.3)継続的なACの提供とそれに対する評価により,対象者にとって意味のある/ないACサービス項目をふるい分けることが可能であることが示唆された.4)対象者の変化が,ケアスタッフのケアに取り組む姿勢を積極的にするなど,ケア提供者と対象者との相互作用が両者の態度変容を生み出していることが確認された.以上から,ACに焦点を当てたケアプランの策定とそれに基づいたケア実践は,痴呆性高齢者の日常生活機能の改善,社会的交流能力や生活意欲の向上に対して有効であるばかりでなく,看護・介護職者らのケアの質の改善意欲の昂進にもつながっていく可能性も示唆された.