著者
松尾 淳子 福田 守良 井内 映美 西澤 知江 大桑 麻由美 須釜 淳子 紺家 千津子 真田 弘美
出版者
一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会
雑誌
日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌 (ISSN:1884233X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.33-39, 2013 (Released:2021-05-07)
参考文献数
17
被引用文献数
1

骨突出部位にかかる外力を管理するために体圧分散寝具が使用されるが、シーツの張りによってハンモック現象が生じ褥瘡発生の原因ともなりうる。そこで本研究目的は、ベッドメーキング方法の違いによる、エアマットレスの圧再分配機能への影響を明らかにすることとした。 静止型エアマットレスに綿100%平織りのシーツを敷いた。その上に、骨突出モデルを設置し垂直荷重を加え、沈み込み距離と接触面積、最大接触圧を測定した。シーツは、シーツの角を三角に折り込む「コーナー法」、コーナー処理をしない「処理なし法」、シーツの角をマットレスの裏面に折り込んで結ぶ「結ぶ法」、エアマットレスのカバーのみの「シーツなし」に分類し比較検討した。 結果、「シーツなし」に対して、「処理なし法」は接触面積、最大接触圧値に有意差はみられなかった。「コーナー法」は、接触面積が0.61倍に縮小、最大接触圧値が1.87倍に上昇しており、マットレスの圧再分配機能が阻害されていた。また、「結ぶ法」も同様に圧再分配機能が阻害されていた。以上より、シーツのコーナー処理がエアマットレスの圧再分配機能に影響を及ぼしていることが示唆された。
著者
村松 恵多 河合 佑亮 恒川 祐太 大森 鮎子 神戸 美樹 山田 幸子 髙井 亜希 眞野 惠好 西田 修
出版者
一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会
雑誌
日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌 (ISSN:1884233X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.Supplement, pp.S1-S8, 2022 (Released:2022-06-06)
参考文献数
15

目的:人工呼吸器管理下で長時間腹臥位療法を受ける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症患者に対する包括的褥瘡予防策の効果、褥瘡発生のリスク因子を検証した。 方法:人工呼吸器管理下で1日あたり16時間以上の腹臥位療法を受けたCOVID-19重症患者を対象に、後ろ向き観察研究を行った。包括的褥瘡予防策の効果検証のため、顔面へのドライポリマー製マットと皮膚接触部位への体圧分散ウレタンフォーム製マットなどを使用した介入前期と、それに加えて顔面への保護用ヘルメットシステムと前胸部への低反発弾性ウレタンフォームを追加した介入後期を比較した。リスク因子の検証のため、褥瘡発生の有無で比較した。 結果:介入前期と後期の対象者は各8名であり、Intensive Care Unit(ICU)在室中の褥瘡発生率は75%vs 50%であった。褥瘡発生部位は頬骨部位が3件vs 5件で最も多く、顎部位は2件vs 0件、仙骨部位は1件vs 1件、踵部位は0件vs 0件であった。褥瘡発生患者ではICU在室中の最大Sequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコアが高かった(中央値19.5 vs 14.0、p=0.034)。 結論:本研究の包括的褥瘡予防策は、顔面の褥瘡発生率の改善には影響しない可能性が示された。リスク因子として最大SOFAスコアが明らかになった。
著者
佐竹 陽子 石澤 美保子 森脇 裕美 升田 茂章 土田 敏恵 貝谷 敏子 田中 結華
出版者
一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会
雑誌
日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌 (ISSN:1884233X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.503-514, 2023 (Released:2023-10-24)
参考文献数
18

本研究は在宅療養者の医療関連機器圧迫創傷(以下、MDRPU)有病状況とケアの現状を明らかにすることを目的とした。 全国指定訪問看護ステーションから単純無作為抽出した1,800施設のMDRPU有病症例を対象に実態調査を行った。 338 施設(回収率18.8%)から252 症例の回答を得た。男性115 名(45.6%)、69.0 ± 25.3 歳(範囲;0-101)、233 件(79.8%)が在宅で発症していた。関与した機器は尿道留置カテーテル68 件、経ろう管法用チューブ56 件、経鼻酸素カニューレ30 件が上位であった。DESIGN-R®の深達度評価はd1が163(55.8%)、d2が85(29.1%)、D3 が18(6.2%)、D4が9(3.1%)、D5 が1(0.3%)であった。在宅で入手可能な物品で試行錯誤しながらスキンケア、接触部位の保護、除圧の外力低減ケアを実施していた。 ケアは訪問看護師のもつ創傷管理の知識で適切にされていると評価できる一方で、医療機関と異なる背景にも留意しなければならない。訪問看護師と皮膚・排泄ケア認定看護師の専門的知見を融合し地域の医療者や介護福祉専門職、在宅療養者や家族に対し従来の褥瘡との違い、重症化予防の観察やケアを教育する必要がある。また在宅療養者や家族の生活状況と変化に応じセルフケアや介護能力を見極め、MDRPU 予防と管理の方法を具体的に検討する必要性が示唆された。
著者
永野 みどり 緒方 泰子 徳永 恵子 石久保 雪江 石田 陽子
出版者
一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会
雑誌
日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌 (ISSN:1884233X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.293-304, 2014 (Released:2021-04-30)
参考文献数
34

褥瘡対策体制における皮膚・排泄ケア認定看護師(以降WOCNと略す)の「病院全体の褥瘡ケアの質に対する主観的影響力」と「褥瘡発生率」に関連する褥瘡対策の構造的な要件や効果的な取り組みを明らかにする目的で、同意を得た425病院に対し、WOCNとその直属上司である看護管理者宛に、質問紙調査を実施した。回答の欠損が少ない200床以上の急性期病院166施設を分析対象とした。 「WOCNの褥瘡ケアの質に対する主観的影響力」に関連する要件として、「WOCNの臨床経験が21年以上」であるというWOCNの個人属性が強く関連していた。「院長の部門間調整」や「認定看護管理者として認定されている看護管理者」「看護管理者のWOCNへの評価」といった管理者の関与に関連があり、その重要性が示唆された。「WOCNの情報発信力」で「褥瘡ケアの質に対する主観的影響力」が強まり、それにより病棟看護師の「医療関連機器圧迫創傷」や「褥瘡対策チームとの連携」の意識が高まると考えられた。 「褥瘡発生率」に有意に関連する取り組みは、「WOCNの褥瘡保有死亡患者の把握」「WOCNの褥瘡のケア技術への自信」「地域の開業医との信頼関係」であった。「十分なWOCNの数」「病棟看護師の医療関連機器圧迫創傷への認識」「OT/PTの関与」も関連していた。 WOCNの「病院全体の褥瘡ケアの質に対する主観的影響力」を成果指標とすることで、「褥瘡発生率」には反映できない部分の褥瘡対策の質が把握できると推察された。
著者
臺 美佐子 峰松 健夫 小川 佳宏 高西 裕子 須釜 淳子 真田 弘美
出版者
Japanese Society of Wound, Ostomy and Continense Management
雑誌
日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌 (ISSN:1884233X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.10-17, 2021 (Released:2021-03-31)
参考文献数
15

目的:弾性ストッキングは主要なリンパ浮腫管理方法である。しかし、高温多湿な夏季には、装着継続のモチベーション維持に困難感を生じさせる。そこでわれわれは、この問題を解決すべくキシリトール加工したキュプラ繊維を用いた接触冷感弾性ストッキングを開発した。本研究の目的は、プロトタイプによる下肢リンパ浮腫患者への接触温冷感の効果および安全性を検証することである。 方法:本研究は前後比較試験で、下肢リンパ浮腫患者をリクルートし、対象者は介入前(従来型)と介入後(接触冷感弾性ストッキング)を各1日自宅で装着して過ごした。アウトカムは、主観的な接触温冷感としてASHAREスコアである7 点法スケール質問紙に、装着直後と脱着時に回答した。その後、電話にて皮膚トラブルと浮腫状態についてインタビューし回答を得た。 結果:分析対象となった者は下肢リンパ浮腫患者の女性13 名で、接触冷感弾性ストッキングによる有害事象が発生した者はいなかった。接触温冷感の評価では、11 名が装着直後では介入前より介入後のほうが冷たいと感じ、中央値+1(やや温かい)から-1(やや冷たい)へ有意に減少した(P=0.002)。一方、脱着時には両グループに前後で有意な差は見られなかった(P=0.133)。また、皮膚トラブルや浮腫増悪の生じた者はいなかった。 結論:キシリトール加工したキュプラ繊維を用いた接触冷感弾性ストッキングは、下肢リンパ浮腫患者に対して皮膚トラブルや浮腫悪化なく接触冷感を感じさせる可能性があると示唆された。
著者
高橋 聡明 新谷 結衣 村山 陵子 野口 博史 阿部 麻里 Koudounas Sofoklis 仲上 豪二朗 森 武俊 真田 弘美
出版者
Japanese Society of Wound, Ostomy and Continense Management
雑誌
日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌 (ISSN:1884233X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.576-584, 2021 (Released:2021-11-10)
参考文献数
28

背景:末梢静脈点滴の合併症は、時には潰瘍化にいたる重要な問題である。血流の多い血管を使用することにより、合併症予防の可能性が示されてきたが、末梢静脈の血流測定方法は確立されていない。そこで本研究では健常者における超音波検査装置による上肢静脈血流量測定の信頼性妥当性検証を行い、血流量測定を行うこととした。 方法:対象は健常成人8人、上肢12本とした。上肢主要静脈である上腕尺側静脈、前腕橈側皮静脈、前腕尺側皮静脈、前腕正中皮静脈を測定部位とし、訓練を受けた看護師が測定を行った。並存妥当性の検証を行うため、従来手技である手動による測定とAuto Volume Flow(AVF)機能を用いて測定を行い、ピアソンの相関係数を計算した。評価者内信頼性検証として級内相関係数(ICC)を、既知集団妥当性として豊富な血流量が予測される上腕尺側静脈と前腕に位置する静脈を比較した。 結果:測定者内信頼性について、従来手技では、すべての測定の平均は25.5 ml/minで、ICC(1,1)(1,3)はそれぞれ0.91 (p<0.01)、0.97(p<0.01)であった。並存妥当性については、従来手技、AVF による測定との相関はr = 0.96(p<0.01)であった。既知集団妥当性として、前腕の主要静脈の血流量はいずれも上腕尺側静脈と有意な差を示した(p<0.01)。 結論:上肢末梢静脈の超音波検査装置による血流測定の信頼性および妥当性が示された。