著者
北村 亜也 田中 啓 松島 実穂 松澤 由記子 谷垣 伸治 小林 陽一
出版者
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.101-105, 2020 (Released:2020-05-13)
参考文献数
13

産科出血は妊産褥婦死亡の主要な原因を占め,速やかな対応を必要とする.近年,子宮動脈塞栓術(UAE)は産科出血に対する治療法として頻用されているが,生殖能への影響は十分に評価されていない.産科出血に対するUAEが月経再開,妊孕性,妊娠合併症に与える影響について後方視的に調査した.産科出血に対してUAEを行った78例のうち,追跡できた53例の月経再開率は98.1%(52/53例)であった.月経再開した52例中,挙児希望があった15例のうち,11例が妊娠成立し,8例が分娩に至った.そのうち3例が前置胎盤となり,その全例で癒着胎盤を認め帝王切開同時子宮全摘術を実施した.本検討により,UAEは月経再開や妊孕性には概ね影響を与えないが,妊娠例では癒着胎盤の発生率を高める可能性があることが明らかになった.UAE後の妊娠については,ハイリスク妊娠としての慎重な管理と十分な患者説明が必要である.
著者
谷垣 伸治 片山 素子 松島 実穂 橋本 玲子 岩下 光利
出版者
The Japan Society of Ultrasonics in Medicine
雑誌
超音波医学 (ISSN:13461176)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.413-420, 2011

救急外来では,全ての疾患を確定診断する必要はない.緊急を要する患者のみを抽出し,時期を逸せず専門医に委ねればよい.産婦人科救急外来に来院する患者の主訴の3分の2は,下腹部痛と性器出血であり,この二つへの対応をおさえておくことが肝要である.産婦人科領域において緊急を要する疾患は限定されている.当院において,救急外来での診察直後に緊急手術を要した疾患は,異所性(子宮外)妊娠,卵巣出血,卵巣腫瘍破裂・茎捻転,PID(pelvic inflammatory disease)のみであった.診断の第一歩は,妊娠反応である.妊娠の有無により,疾患を患者数から見て約半数否定することが出来る.ついで超音波断層法を行う.緊急を要する疾患の鑑別の為には,子宮内に妊娠しているか否か,卵巣腫瘍の有無,腹腔内出血の有無の確認のみで十分である.心配な症例は,時間をおいて繰返し検査する.超音波断層法は,他の検査に比し簡便かつ非侵襲であり,産婦人科救急において最も有用かつ必須な検査である.