著者
谷川 彩月
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究 (ISSN:24340618)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.114-129, 2017-12-20 (Released:2020-11-17)
参考文献数
19

本稿の目的は,長期的な里地里山保全に向け,農地全体での資材投入量を削減する手法のひとつとして慣行農家による減農薬栽培の導入プロセスに着目し,彼らがどのようにして減農薬栽培へ取り組むに至ったのかを明らかにすることである。持続可能性に関わる問題では,長期的・累積的な行為の集積結果として問題が発生しうるため,長期的に里地里山を保全していくには,農地全体で投入資材を削減していくことが必要である。そのため,現状で圧倒的多数をしめる慣行農家に投入資材の削減を促すようなしかけが必要となってくる。本稿では,変革志向性が弱い農家を取り込んで減農薬栽培が普及している宮城県登米市を事例として,それを成立させたしくみと農家による取り組みへの意味づけを明らかにした。くわえて,減農薬栽培の学習プロセスによって,当該地域では慣行農法や転作作物を含めた田畑全体での減農薬化が進んでいること,多くの農家の参加を許容できる環境保全米のあり方が,多様な動機の集積による「結果としての環境保全」と呼べる状況を作り出していることを確認した。明確なイシュー志向を持たない層の行動変容を促すには,行動変容を促すような技術・思想あるいは施策と,彼らの生活世界との接合点を見いだすことが重要であるということが明らかとなった。