著者
豊坂 祐樹 藤尾 光彦 廣瀬 英雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. R, 信頼性 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.306, pp.13-17, 2006-10-13
被引用文献数
1

21世紀人類が直面する恐れのあるパンデミックインフルエンザ,あるいはテロ行為による疫病感染拡散などに対してその社会的影響は極めて大きいことを考えると,リスク回避という面から様々な条件のもとでの疫病感染の拡散状況を事前に知っておくことが望ましい.ここでは,空気を媒体にして人から人へ伝染する疫病を想定した人と人とのネットワーク構造をモデル化した上で,初期感染者から未感染者へと疫病が伝染するシミュレーションを行い,最終的なパンデミック段階の感染者蔓延状況を予測することを行った.このことにより,新たな疫病のアウトブレイクやテロ行為による疫病蔓延に対するリスク回避への準備や対策を講じることが可能となる.
著者
豊坂 祐樹 廣瀬 英雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. R, 信頼性 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.232, pp.31-36, 2009-10-09
参考文献数
23

常微分方程式によるSIRモデルとマルチエージェントモデルMASを組み合わせて,パンデミックシミュレーションを効率的に行うMADEモデルを提案し,また,その妥当性についても検証を行なってきた.パンデミックシミュレーションは観測例が極めて少ないので通常はシナリオによるシミュレーションが行なわれる.しかしながら,2009年4月にメキシコに端を発したと思われる新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)はまれにみるパンデミックの実例となっている.9月現在,まだ感染は拡大し続けており,今後の動向は不明である.ここでは,観測されたパンデミック初期のデータを用いて,感染蔓延がどのように広がるかという予測をシミュレーションによって行う.また,他の統計的な予測方法との比較も行う.シミュレーションによる予測が観測結果とどのように合致しているか,あるいは異なっているかについては未知であるが,初期段階でのこのような取り組みは重要と考えるので,現段階でできる結果について報告する.MADEモデルによれば,2009年7月までの観測データを用いた場合の日本での感染者総数の予測値は約3,000万人,全世界では5億人程度と予測された.