著者
廣瀬 英雄 豊坂 裕樹
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.270-277, 2009-06-01 (Released:2018-01-31)
参考文献数
21

人から人へ感染するように変異した鳥インフルエンザが現れれば,世界中で多数の死者が出ると予想され人類にとって脅威となる.どの程度の被害が出るのか,どのように防げば被害が少なくなるのかは経験がないために全く予想できない.そこで,いくつかの考えられる条件のもとでシミュレーションを行い,災厄の見当をつけることを考える.この方法は従来の対比する対象がある場合のシミュレーションの枠組みと異なり,いわばシナリオにもとづくシミュレーションである.ここでは,感染病が蔓延するパンデミックシミュレーションについて,まず計算モデルの考え方を示し,次に比較的単純な街のモデルを使ってシミュレーションを行った結果について述べる.詳細な条件設定が可能でも計算コストがかかるマルチエージェントシミュレーション法,マクロな傾向しか捉えられないが簡便な微分方程式を用いる方法,多くのケースを比較的短時間で確認できる両者を組み合わせたハイブリッド法を紹介し,パンデミックを阻止する効果的な方法について考察する.swine fluについても少し述べる.