著者
永井 幸寿
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.326-329, 2016 (Released:2019-08-01)

昨年11 月に安倍総理大臣は災害を理由に憲法に 緊急事態条項,すなわち国家緊急権を設けることを 国会で明言した.私は,阪神・淡路大震災で事務所 が全壊して以来,21 年被災者支援活動を行ってき た者として以下に災害の現場に基づく意見を述べさ せていただきたい.
著者
坂井 丈泰
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.158-164, 2017 (Released:2019-10-01)

GPS(全地球測位システム)は,地球上のどこでも自分の現在位置を知るためのシステムである.周 知のとおり,いまや社会インフラともいえるほど広く利用されており,交通システムにおける利用も進 められている.ただし,GPS は人工衛星からの電波を使用するので,他システムからの電波干渉や意図 的な妨害により利用不能となり得ることに注意が必要である.さらに,GPS の信号を記録・再生するこ とによる攻撃や,GPS と同一の信号を生成することで GPS 受信機に誤った位置を出力させることも考え られている.本解説は,こうした GPS におけるセキュリティの問題について述べるとともに,現在考え られている対策を紹介する.
著者
秋山 浩一
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.86-93, 2016-03-01 (Released:2018-01-31)

本稿では,日本の企業の現場において"ソフトウェアテストに対する取り組み"がどのように行われているか,筆者のコンサルティング活動を通じて得た事実を述べる.一般にソフトウェアテスト(以降,特に断らない限り「テスト」は「ソフトウェアテスト」を指すものとする)は,ソフトウェア開発の最終工程に位置する.テストの第1の目的は,商品やサービスのリリース後の市場不具合を事前に見つけることで品質コストにおける外部失敗コストを内部失敗コストに変え,トータルの品質コストを下げて適正化することにある.商品にもよるが不具合1件当たりの外部失敗コストは内部失敗コストの10倍程度かかることが知られている.筆者のコンサルティング先の企業においてもテストで不具合が見つかるうちはテストを続け,評価コストを費やしてでも外部失敗コストを内部失敗コストに変えるほうが"トータルの品質コストを低く抑えられる"ことが確認されている.このようにソフトウェア開発における品質コストの適正化手段のひとつとしてテストは現実的な解であり今も重要な活動である.しかしながらテストで使用している技術は,ここ30年ほとんど変化はなくテストに対する専門的教育も実施されず,現場のテストエンジニアの経験と勘に依存している状況にある.本稿では,世の中の変化によって変わってきたテストの現場が直面している課題と変化について報告する.
著者
永田 忠博
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.510-520, 2008-08-01 (Released:2018-01-31)
参考文献数
6

21世紀に入り,食品を巡る一連の不祥事が続いた.その結果,日本の食品安全行政はリスク分析の考え方に基づく組織となった.様々なハザード(危害要因)の調査研究が進む中で,フードチェーンを通した安全確保が重視され,規制も技術開発も変わってきている.また消費者の信頼確保のため,リスクコミュニケーションが重視され,食品の身元保証のための技術開発も進んでいる.本稿では,その動向を概説する.
著者
阪本 貞夫
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.29, no.8, pp.548-555, 2007
参考文献数
13

太陽光発電は化石燃料に過度に依存した現在社会のエネルギー構造を変えていく重要な手段である.太陽電池が急速に普及している状況を概観する.一方世界人口66億の1/4は無電化地域に生活しており,太陽電池はそのような地域に文明をもたらすことが出来るものであるが,こちらはなかなか普及が進まない.太陽電池の今後の展望とさらに将来クリーンエネルギーだけで生活していける社会を目指すジェネシス計画についてふれる.
著者
廣瀬 英雄 豊坂 裕樹
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.270-277, 2009-06-01 (Released:2018-01-31)
参考文献数
21

人から人へ感染するように変異した鳥インフルエンザが現れれば,世界中で多数の死者が出ると予想され人類にとって脅威となる.どの程度の被害が出るのか,どのように防げば被害が少なくなるのかは経験がないために全く予想できない.そこで,いくつかの考えられる条件のもとでシミュレーションを行い,災厄の見当をつけることを考える.この方法は従来の対比する対象がある場合のシミュレーションの枠組みと異なり,いわばシナリオにもとづくシミュレーションである.ここでは,感染病が蔓延するパンデミックシミュレーションについて,まず計算モデルの考え方を示し,次に比較的単純な街のモデルを使ってシミュレーションを行った結果について述べる.詳細な条件設定が可能でも計算コストがかかるマルチエージェントシミュレーション法,マクロな傾向しか捉えられないが簡便な微分方程式を用いる方法,多くのケースを比較的短時間で確認できる両者を組み合わせたハイブリッド法を紹介し,パンデミックを阻止する効果的な方法について考察する.swine fluについても少し述べる.
著者
森 啓之
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.317-327, 2008-06-01
被引用文献数
2

欧米諸国を中心に世界的に電力の自由化が進むにつれて,電力システムは一社の地域独占で発電,送電,配電,小売の形態から,電力市場や相対取引を介して電力を売買する形態に様変わりつつある.その結果,電カシステムは競争的環境に変貌し,個々のプレヤーは従来よりも利益を最大化する傾向にある.同時に,多様化するプレヤーの存在や分散電源の利用により,電力システムにおける不確定性の度合いが増し,従来の電カシステムよりも停電が起き易い環境が内外で懸念されている.そのような環境下で,電力システムの運用・計画の観点から,発電機で発電された電力が,送電ネットワークを通して適切に需要家に送電されるかを検討する信頼度評価に対する関心が高まっている.本稿では,電力システムにおける信頼度評価法について概説する.
著者
西 干機
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.200-207, 2010-06-01 (Released:2018-01-31)
参考文献数
16
被引用文献数
2

デザインレビュー(DR)が形作られたのは,1950年代後半と言われている.ここではまず,このようなデザインレビューの生立ちとその進展について標準化の観点から記した.次に,デザインレビューの定義とその運用に関わる代表的な国際規格であるISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)規格及びそのツール規格であるIEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)規格について紹介した.そして,日本でのDRの導入とその展開及び現国際規格の運用上の問題点と今後の展望について述べた.
著者
塩野 登
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.198-205, 2007-07-01 (Released:2018-01-31)
参考文献数
26

CMOS LSIの高集積化・高性能化・低消費電力化は,基本構成要素のMOSFETの比例縮小則(スケーリング則)による微細化に基本を置き,その中心技術としてゲート酸化膜の薄層化がある.現状の最先端デバイスでは,その膜厚が2〜3nmとなり,物理的限界に近づいており,その代替技術として,高誘電率膜の開発が進められている.その高誘電率膜技術の開発の現状,問題点,信頼性上の着目点と現状について展望する.
著者
土肥 正
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.2-9, 2014

ソフトウェアエージングと呼ばれる現象は30年程前からその存在が認識されていたが,発生メカニズムや予防策であるソフトウェア若化の研究が盛んに行われるようになったのは2000年頃からである.最近では,ソフトウェアエージングと若化の研究発表が国際ワークショップで定期的に行われるようになり,研究者や実務家のコミュニティも徐々に拡大しつつある.我が国の信頼性研究の拠点でもある日本信頼性学会の学会誌において,「ソフトウェアのエージングと若化」の特集号を企画し,現在の研究動向を各分野のエキスパートに執筆して頂いたことは大変貴重な機会である.特集号の一番バッターでもある本稿では,各種応用領域において展開されているソフトウェアエージングと若化に関する研究の基礎知識として,当該研究分野の歴史的な経緯を概観した後,用語の定義や事例紹介を行い,以降に続く4編の解説記事を理解する助けとしたい.
著者
立平 良三
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.328-335, 2003-06-25

天気予報の信頼性についての基本的な情報は精度の検証によって提供される.天気予報の精度検証が組織的に行われるようになったのは比較的最近のことであり,利用者へはまだ十分浸透しているとはいえない.天気予報の精度は年々向上しているものの,気象観測網の粗さや大気現象のカオス的性質のため誤差は避けられず,効果的な利用のためには精度の把握は不可欠である.信頼性へ配慮することなく,予報を近似的にでも確報と考えて利用できる時代の到来はまだまだ先のことであろう.最重要の課題は,全地球大気(さらに海洋も)の三次元の高分解能観測網の確立である.天気予報の精度は,適中率などの単一の指標で評価できるものではないし,また日々の予報毎に変動する.降水確率予報のような確率形式の予報は,利用者に日々の予報の精度を含めて提供する,最も実用的な手段である.確率形式のメリットが利用者に広く認識されるようになれば,今後各種の予報の発表形式として要望されてこよう.
著者
臼井 光昭
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.25, no.8, pp.710-717, 2003-11-25
被引用文献数
1

近年,コンビニで使われるPOSシステムはコンビニの顧客サービスの高度化に伴いマルチメディア対応機能や高度な通信機能が必要になると同時に,24時間・365日,絶え間なく顧客サービスを提供する必要があり,極めて高い信頼性が求められている.また,コンビニ店舗でのローコスト・オペレーションやコンビニで働く店員の不足を補う為,パート・アルバイトの活用が不可欠になっており,不慣れな店員であっても間違いのない接客が可能な,容易,且つ簡素な操作や誤操作を未然に防ぐ様々な工夫がコンビニ向けPOSターミナルに求められている.本稿では,コンビニ向けPOSターミナルの信頼性を高める工夫の一部を紹介する.
著者
加藤 明
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.172-177, 2012-03-01

宇宙活動において,「宇宙のごみ」(以下「デブリ」)の発生を防止する取り組みは,国連や国際標準化機構が推奨するガイドラインや規格類,並びに宇宙先進国政府あるいは公的機関が発行する標準書等にて進められており,各国の関係者それぞれが可及的速やかに実行に移す必要がある.しかし,単なるデブリ発生防止策を続けてもここ数年間の増加傾向が今後も継続すれば,宇宙活動を持続することはいずれはかなり困難となるほどである.このような悪化した軌道環境では,デブリ発生防止の取り組みだけでは不足であり,デブリの被害に対して積極的に信頼性と安全性を確保する必要がある.衛星・ロケットの品質を運用終了まで維持する信頼性,運用終了時点での廃棄処置を行うことの信頼性は,デブリ衝突による故障発生確率を含めて保証されるべきである.本稿では更に処分した衛星・ロケットが地上に落下する際の対人安全性にも言及する.なお,本稿は筆者の調査の結果得られた個人的見解を示すものであり,組織としての見解を示すものではない.
著者
田村 信幸
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.699-709, 2004-11-01
被引用文献数
3

本稿では,定期的にシステムの状態が観測され,この観測された状態が時間離散的マルコフ連鎖に従って劣化するシステムを考える.点検後,稼働,修理,取り替えの内の1つの行動を取る.修理はM通り存在し,修理後の状態は不確実である.このようなモデルについて,無限期間における総期待割引コストの最小化を目的としたとき,幾つかの適当な条件の下,一般化されたコントロールリミット・ポリシーが最適となることを導く.複数修理に着目したときの最適保全政策の性質を明らかにする.さらに,得られた性質が本稿で提示した条件よりも緩い条件の下でも成り立つことを数値実験によって検証する.
著者
清水 尚憲 梅崎 重夫
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.32, no.8, pp.546-553, 2010-12-01

クレーン等による死亡労働災害は,昭和48年のピーク時に約400件であったのと比較すれば,年間約100件と大幅に減少している.しかし,現在でも,クレーンからのつり荷の落下,つり荷による挟まれ,クレーンからの墜落,機体等の折損・倒壊・転倒,つり荷の激突などが依然として多発しており,これらの災害に対する適切な災害防止対策が必要とされている.このため,日本クレーン協会では,これらの多発する災害を未然に防止するための危険性または有害性の事前評価手法として,「クレーン等のリスクアセスメント実施要領(日本クレーン協会規格JCAS0001-2008)」を公表している.本稿では,前記規格を小型移動式クレーンに適用する際の基本的考え方とリスクアセスメントの具体的実施事例を概説する.
著者
田村 高志
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.345-355, 2005-08-01

この20年間, 国産の衛星開発はロケットの大型化と歩調を合わせて常に先端を目指し, 大型化, 高性能化を追求してきた.衛星の打上, 運用によって得られた知見は非常に大きく, 自主技術による衛星開発のリスクは想定の範囲内にあると思われた.しかし, 「みどり」, 「みどりII」と2機連続しての運用断念を経験し, 大型衛星の開発が従来の開発手法の単純な延長線上にはないことを思い知らされた.一方海外に目を向けると, 同様に大型化を進めた商用衛星に多くのトラブルが発生していることが知られている.このような状況から, 国産衛星に限らず大型衛星の開発には従来技術の範囲を超えたリスクが存在し, 確実な開発に向け新たな取り組みが必要であることが改めて認識されている.ここでは, 衛星開発における設計・評価・レビュー及び技術蓄積の観点から現状を分析し, 特に衛星の信頼性向上のためになすべきことについて述べる.
著者
秋田 雄志 荻野 隆彦
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.71-79, 2005-01-01
被引用文献数
6

鉄道の安全性を維持し、さらに向上するにはリスクの概念を採り入れた目標管理が必要である。本論文は、最初に過去50年間に発生した日本の鉄道の致死事故を分析し、事故の規模に応じた事故死リスクの実績を示す。次に、鉄道における事故死リスクを、自発的行為の結果を含む事故死リスクR_Aと被災による事故死リスクR_Bに分け、それぞれに対して許容リスク水準R_<A1>とR_<B1>、および広く受容されるリスク水準R_<A2>とR_<B2>の指標値を提案する。また、他の輸送機関における致死事故のリスク実績との比較等により、提案する水準の妥当性を考察する。